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[キングの鉄棒はなぜ最強か]内村航平「僕はやはりオールラウンダーなんだ」

2021/07/15
体操界の絶対王者が鉄棒への専念を発表してから1年。4度目の五輪に“スペシャリスト”として臨む内村の真価を、本人の言葉と元指導者、元チームメイトの証言から明らかにする。

 五輪の金メダル3個、銀メダル4個を持つ体操界のレジェンドにとって、東京大会は新たな境地で新たな輝きを見せるための舞台になる。自身4度目の五輪に挑む“キング”こと内村航平にとって、今回はオールラウンダーとしての出場ではない。種目別の鉄棒に絞っての挑戦だ。

 かつて内村は、「鉄棒は点の取れる種目という感覚があるが、得意というわけではない」と語っていた。ところが、世界選手権種目別鉄棒では2011年の銅メダルを皮切りに、'14年には銀メダル、'15年には金メダルを獲得。'18年も銀メダルを手にしている。東京五輪が1年延期となった昨年、「種目別の鉄棒のみに絞って五輪出場を目指す」と宣言してからは、世界屈指の大技であるH難度の「ブレットシュナイダー」を構成に組み込むほどになった。

 得意ではないと言っていた種目で、五輪の頂点をうかがうまで上達できたのはなぜか。若き日の鍛錬か。理想を追い求めるあくなき探求心か。出るからには1位を目指すという信念か――。

「大学に入ってきて最初に見た時から、6種目トータルで質の良い体操をしていましたね。それと、着地が強いというイメージがありました」

 日本体育大学時代の'07年から'11年まで内村を指導した畠田好章氏(日本体育大学体操競技部男子副部長)は、今から14年前の出会いを懐かしそうに振り返った。高校3年生で早くもナショナル選手になっていた内村には、その頃既にオールラウンダーとして世界と渡り合っていくための基本技術が備わっていた。ただし、ゆかや跳馬は得意でも、鉄棒だけに目を向ければ、今すぐ大学生やシニアと勝負できるというレベルではなかったという。

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photograph by KYODO

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