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[2冠達成インタビュー]橋本大輝「譲らず、おごらず、王者の道を」

2021/08/14
個人総合と種目別鉄棒、2つの個人種目で金メダルに輝いた、体操ニッポンの新エース。オリンピック個人総合3連覇を目標に掲げる20歳の、長く険しき旅路がいま始まった――。

 なんと劇的な、そして鮮やかな新チャンピオンの誕生だろう。7月28日の体操男子個人総合決勝。2日前の団体で銀メダルに終わって悔しさを噛みしめた橋本大輝が、88.465点のハイスコアで金メダルを勝ち取った。日本勢として初めての10代選手による個人総合制覇で、体操ニッポンの通算100個目のメダルを獲得。ロンドン五輪、リオデジャネイロ五輪を連覇した内村航平に続き、日本勢がオールラウンドの戦いを3大会連続で制した。笑顔で両腕を天に掲げる19歳に涙はなかった。

「人生で本当にうれしい瞬間とは、言葉では言い表せないものだと感じた。でも、やっぱり団体のみんなで表彰台の一番高い段に上りたかった。ここで涙を流してしまうと今の状態に満足してしまうことになる。チャンピオンは涙を流さず、前だけを見ているものだという考えをもっていきたい」

 19歳は王者のプライドを瞬時にまとっていた。

 予選トップ通過の勢いを個人総合決勝につなげた。1種目めのゆかで14.833点を叩き出すと、2種目めのあん馬では、15点超えとなる15.166点をマークして首位に立った。ところが、続く苦手のつり輪で技の難度が認められない不測の事態。若干の動揺が見られた4種目めの跳馬では好演技を連発するライバル勢に抜かれ、4位まで順位を下げた。

 しかし、ここからが橋本の真骨頂だった。5種目めの平行棒で自己ベストタイの15.300点を出して3位に浮上した。この時点での首位は'17年世界選手権優勝の肖若騰(中国)で、2位は同'19年優勝のニキータ・ナゴルニー(ROC)。2人は'17年以降の世界大会で種目別を含めいくつも金メダルを獲っている実力者であり、この日もミスをすることなく得点を重ねていた。

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photograph by Shinya Mano/JMPA

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