東部戦線に向かうはひとクセある猛者たちだ。異国から転戦する二刀流に、鋭利な末脚、そして名将率いる伏兵がいま襲いかかる。
西軍の騎馬武者たちは、武蔵府中での反攻へ刃を研いでいる。群雄割拠と目された皐月賞から一転して「1強」や「東高西低」の下馬評が囁かれるダービー戦線。実際に栗東トレセンでも、敗れた陣営から「あの馬が抜けている」との声が聞かれた。だが、兜を脱ぐにはまだ早すぎる。
そのクラシック初戦が重~不良の道悪で開催されたのは'89年以来34年ぶりだった。特異な馬場での戦果を悲観する必要はない。直近10年で二冠を狙った皐月賞馬は2勝8敗。無敗で挑んでも1勝2敗だ。今年も天下統一に抗う豪勇が続々と東上する。
多士済々の中でかつてない異彩を放つのが、二刀流の風雲児ドゥラエレーデだ。芝2000mのGIホープフルSの覇者にして、前走はダート1900mのUAEダービーで2着。異国からの転戦は、今年で第90回の東京優駿でも史上初となる。
立身出世の予感はあった。系図には伯父にGI2勝馬サトノダイヤモンドの名があり、1歳夏のセレクトセールでの落札額は1億1000万円。昨夏の初陣前に跨がった池添学調教師は、馬上で衝撃を受けた。
「すごい馬だと思いました。『モノが違う』と。乗っている感覚以上に、楽に時計が出ました。跳びが大きく、体をしっかり使えていて、2歳馬離れしていました」
その確信は揺らがなかった。1番人気の新馬戦でまさかの5着。3走目に初ダートの1700m戦でようやく初勝利を挙げた。次戦には登竜門として名高いGII東京スポーツ杯2歳Sを選ぶも4着。なおも諦めず、敢然とホープフルSへ駒を進めた。
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