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[芝&ダート二刀流列伝]境界線を越えた異能者たち ホクトベガ/クロフネ/アグネスデジタルほか

2022/10/21
ホクトベガ
緑の絨毯から、褐色の土の上まで――。舞台を選ばず走り続けた競走馬がいる。地方競馬との交流でその才が見つかったホクトベガ、それに続くように芝とダートの頂点に立った規格外ホースたちの偉業を振り返る。

 大谷翔平は投手と打者の二刀流だが、競馬で二刀流といえば芝とダートだ。両者はそれぞれ独立したレース体系を持ち、まるで別の競技のように施行されている。しかし稀に、無遠慮にさえ映る力強さでその境界線をぶち壊し、突破していく馬がいる。'97年のフェブラリーSのGI昇格以降、芝とダートでGIを勝った馬はクロフネ、アグネスデジタル、イーグルカフェ、アドマイヤドン、モズアスコットの5頭(ヴィクトワールピサの'11年ドバイワールドCはダートではなくオールウェザー)。でもこの話をするなら、まずはホクトベガからだ。

 3歳秋にエリザベス女王杯を制したホクトベガは、5歳を迎えた'95年6月、地方競馬の川崎の牝馬限定重賞エンプレス杯に出走。降りしきる雨の中、ナイター競馬のカクテル光線が反射する水たまりのようなダートを爆走し、2着に3秒6、約18馬身差という衝撃的な圧勝を収めた。

 中央と地方が協力し、互いの所属馬が出走できるシステムを整備し始めたこの年は「交流元年」と呼ばれ、笠松のライデンリーダーが桜花賞に出走(1番人気4着)して大きな話題となった。反対に中央のライブリマウントは帝王賞など地方のダートを席巻。しかしなんといっても、中央の芝GI馬が地方のダートに出走し、圧勝したエンプレス杯のインパクトは絶大だった。

 ホクトベガは翌年も川崎記念、フェブラリーS、帝王賞、南部杯など中央と地方のダートで無双。しかしフェブラリーSのGI昇格も、地方のレースのグレードが中央と統一されるのも、すべて次の年からだった。そして7歳春、ドバイワールドCのレース中に怪我で競走を中止したホクトベガは、そのまま帰らぬ馬となる。

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photograph by Tomohiko Hayashi

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