#1070
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[1次ラウンド総括]“想像以上”の4戦全勝

2023/03/31
東京ドームの大歓声を背に得点を重ねていった侍打線。予想を上回る破壊力を生み出した要因は何だったのか。第1回優勝メンバーの谷繁元信が読み解く。

 日本が4連勝で1次ラウンドを突破できた最大の要因は、想像以上に機能した打線……とくに1番のラーズ・ヌートバー、2番に入った近藤健介、3番の大谷翔平、この3人の流れがハマったからだと思います。そもそもメジャー組の合流が遅くて、宮崎、名古屋の壮行試合では打順を確定できなかったし、メジャー組が入って本番を想定した打線が組めたのは大阪の2試合だけ。だから誰が何番を打つんだろう、打線の流れがどう繋がっていくんだろうという心配はあったはずです。しかも初めて対戦するピッチャーを打ち崩すのは難しいこともわかっていました。実際、データがなかった中国、初めて見るチェコのピッチャーには序盤、苦労しましたからね。そういうところで言えば、僕の予想よりも打線が頑張って点数を取ってくれたと思います。

Naoya Sanuki
Naoya Sanuki

 この4試合、1~3番が機能したのは2番に入った近藤がしっかり仕事をしたからでした。もし鈴木誠也がケガをせずWBCに出場できていたら、近藤は試合に出られなかったはずです。外野は吉田正尚、ヌートバー、誠也の3人で、DHは大谷ですから、近藤は出られない。おそらく打順も1番がヌートバー、2番大谷、3番誠也が順当だったでしょう。もしかしたら1番大谷、2番ヌートバーもあったかもしれない。もちろんその打順でも打線は機能したかもしれませんが、4連勝した日本に勢いを生んだあの流れとは違う形だったと思います。

1番から並ぶ3人の脅威。「大谷はピラミッドの尖端にいる」

 1番のヌートバーは、ボールを点でなく線で捉える技術を持っています。ボールを捉えられる場所が長い線になるようなバットの出し方ができているんです。しかも初めて対戦するピッチャーに、初球から積極的に振っていくメンタルの強さもある。メジャーの場合は日本と比べて対戦するチームが多い分、初見のピッチャーと当たることも珍しくないし、いろんなピッチャーと当たります。だから慣れないピッチャーに対して、自分のタイミングで打ちにいきながら見逃す、ストライクゾーンに来たら打つ、という技術が身体に染みついてるのかもしれません。日本のバッターは、初めての相手だとつい見ていこうとしてタイミングが取れずに手を出せなくなることがよくあるんです。それがヌートバーにはない。WBCのような大会にはうってつけのトップバッターです。

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photograph by Nanae Suzuki

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