アメリカへ旅立って2年。ボストンで確かな足跡を残した頼れる右腕がロッテに舞い戻ってきた。彼の人生観に大きく影響した海の向こうの空気をまとい、何かを変えてくれる予感を漂わせながら。
見慣れない光景だった。
2023年3月8日、ZOZOマリンスタジアム。日本球界復帰後、初めて対外試合のマウンドに立つことになった千葉ロッテの澤村拓一は、日本ハムとのオープン戦の5回表、出番がやってくると、ライトの方向からマウンドまで駆けてきた。
マリンスタジアムでは二番手以降の投手は通常、リリーフカーに乗ってくる。だが、澤村は自ら「乗らない」と申し出た。
「2年間で慣れちゃったんで。走ってくる間に、状況とか、雰囲気とか、いろんなことを考えられますし」
澤村は2011年からほぼ10年間、巨人でプレーし、2020年9月7日、突然、ロッテにトレードされた。直前まで巨人のファームでもがいていた澤村は、ロッテ移籍後、22試合に登板し、13ホールド、1セーブの好成績を収める。その中でもひと際、鮮烈だったのは12.43という奪三振率の高さだった。この驚異的な数字がメジャー球団の目に留まり、2021年から2年間、レッドソックスでプレーした。
シーズン中も、澤村はこのメジャー流とでも呼ぶべき駆け足の登場スタイルを継続するつもりだ。そんな澤村は日本球界に「復帰」したというより、まるでメジャーからやってきた助っ人外国人のような雰囲気を漂わせている。
「こんな見た目ですしね」
体は以前日本にいたときよりも約4kg大きくなり、現在は105kgだという。そして、メジャー時代に伸ばし始めた長い髪とあご髭が今やすっかり板に付いた。
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photograph by Kiichi Matsumoto