それは日本ラグビー界が渇望し続けた存在だった。
ラインアウトで、キックオフで、相手の長身選手と空中高く競り合ってボールを獲得する。相手のキックをその場で跳び上がってチャージする。1対1のコンタクトで、その場で倒れ込むだけで大きなゲインが生まれている――歴代の日本代表は、海外トップチームには必ず存在する長身選手のそんな業に煮え湯を飲まされ続けてきた。あんな選手がこっちにいたら……。
'21年に19歳で日本代表に加わったワーナー・ディアンズは、その夢をプレゼントしてくれた、背の高いサンタクロースだ。
リーグ公式プロフィールの身長は201cmだが、本人は「最後に測ったときは202cmでした。去年の開幕前くらいです。たぶんそこで止まりました」と苦笑した。
ディアンズはニュージーランド(NZ)の首都ウェリントンで生まれ、スポーツトレーナーの父グラントさんがホークスベイのS&Cコーチに就任したときに北島東海岸のネイピアに移った。母タニアさんはNZの国民的女子スポーツ、ネットボールの名選手。父母とも身長185cmの長身で、息子にはそれが遺伝した。
少年は4歳でラグビーを、8歳でバスケットボールを始めた。中学生のとき、U13ホークスベイの代表に両方の競技で選ばれた。バスケットではNZの全国大会で5位の成績を残した。
14歳のとき、父が日本のトップリーグ、NEC(現東葛)のS&Cコーチとして招かれ、中学生だったディアンズは父とともに来日した。父が住居を構えた我孫子市にはバスケットボールのクラブはなく、歩いて3分のNECグラウンドであびこラグビースクールが活動していた。少年は週末、そこに通うようになった。
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