佐久長聖高で大迫傑や佐藤悠基ら五輪ランナーを育成。'19年の箱根では東海大を初優勝に導く実績をあげながらも、稀代のエースメーカーはまだ見ぬ理想像を追い求めていた。(初出:Number1042号[東海大学]両角速「リアルとロマンの狭間で」)
箱根駅伝におけるエースのあり方――。東海大学駅伝監督、両角速は理想と現実のギャップを理解しながらも、自身の抱く夢を追い求め続ける指導者だ。
エースとはどんな存在か。こう問いかけると、淀みない答えが返ってくる。
「絶対的な存在。ゲームでいえば切り札です。信頼性があり、監督がいないところでも自分で考えることができ、こちらが任せられる人間性も必要。それらをトータルで備えている者です」
これ以上ない要求である。ただこの言葉でもまだイメージを伝えきれない様子で、もどかしそうに「“こいつ、すごいな”ってものを放っている選手っているじゃないですか? それがエースです」と付け加えた。
もうひとつ譲れない具体的な条件がある。
「2区を走ること」。それも度肝を抜く走りをしてこそ本物だと両角は言う。
「只隈伸也さん、米重修一さん、大塚正美さん、もちろん瀬古利彦さんも。歴史に名を残すランナーは皆、ここで激闘していますから」
一方で、自身が率いる東海大で常に理想のエースが育ち、2区に起用できたわけではない。長野県の佐久長聖高ではロンドン五輪長距離2種目代表の佐藤悠基や、大迫傑など、綺羅星の如く輝く選手を育成し、'08年には全国高校駅伝で優勝。その実績を買われて、母校、東海大から三顧の礼をもって迎えられたのが'11年のこと。以来、箱根を戦うにあたっては期待を込め、1年生を送り込んだ年もあれば、安定感を重視した年もある。
'19年、総合優勝を成し遂げた時の2区は箱根初出場の湯澤舜で後者のタイプだ。
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photograph by Takashi Iga