東洋大のエースには色気がある。
“山の神”柏原竜二、マラソン元日本記録保持者の設楽悠太、東京五輪に出場した服部勇馬と相澤晃。酒井俊幸が'09年に監督に就任して以来、東洋大は個性的なランナーを生み出し続けてきた。
なぜ東洋大のエースは記憶に残りやすいのか? 酒井に「エースの条件」を問うと、その答えが見えてきた。
「私がよく選手たちに伝えているのは、大学名より自分の名前が先に来るような選手になって欲しいということ。たとえば1年で将来のエース候補である石田洸介には『東洋大の石田ではなく、石田洸介として覚えてもらえるようにしよう』と言っています。イチローさんや大谷翔平選手のような子供たちが憧れる日本のヒーローに、陸上選手がなって欲しいんです」
酒井がエースの「生態」を知ったきっかけは、監督1年目、柏原との出会いだった。柏原は前年度の箱根駅伝で東洋大初の優勝を成し遂げ、すでに時の人になっていたが、弱さとも言える繊細さを抱えていた。
「柏原はみんなと同じ練習をやったら、次の日に起きて来られないようなところがあった。でも本番では120%の力を出せる。たとえば箱根駅伝では中継所に入ると目がカッと見開き、オーラを漂わせ始める。箱根という舞台に立つ役者のようでした」
柏原の次のエース、設楽啓太・悠太兄弟もそうだった。
「双子でもタイプは全然違って、啓太はアベレージ型で2区と5区を走り、責任感が強くキャプテンもやりました。一方、悠太は1年のときに『1区は朝が早いからやりたくない』と平気で言って(笑)。2区も5区もヤダと。エースになれるような逸材は、体の使い方も心のあり方も、感性が鋭敏なんです」
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