'15年W杯の日本と、'19年W杯のイングランドの共通点。それは、本大会に至るまでの強化プロセスにおいて、然るべきタイミングで「主将交代」に踏み切ったことだ。その決断には、指揮官の明確な意図と目的が存在した。数多のチームを率いてきたエディーさんのキャプテン論。(初出:Number1020号エディー・ジョーンズ「キャプテンは熱湯に耐えよ」~名将が語る理想像~)
――今日はキャプテンについてうかがいます。エディーさんが作るチームでは、ヘッドコーチ(HC)とキャプテンは共に過ごす時間も長いし、緊密な関係を結びますね。
エディー・ジョーンズ(EJ) コーチはビジョンを示し、キャプテンをはじめリーダーたちは、それを具体的に選手たちに落とし込みます。両者の関係性は、チームの結果に直結するでしょうね。
――エディーさんが2012年に日本代表のHCに就任された時、キャプテンに廣瀬俊朗を指名しました。
EJ 当時の日本代表には、なにより変革が必要でした。世界の舞台では負けるのが当たり前になっていて、そんな発想に慣れている人間は必要なかった。廣瀬ならイチから代表のカルチャーを変えてくれる可能性を感じていたんです。もともと、彼は慶應でキャプテンをしていた時から、知性的でバランスの取れた青年でしたし、私がサントリーのHCとして廣瀬がリーダーを務める東芝と対戦すると、彼がチームの核であることは一目瞭然でした。どんな状況になっても諦めないし、仲間を鼓舞する。日本代表の変革のためには、廣瀬の前向きな姿勢と知性が必要だったのです。
――実際、廣瀬はどんなリーダーでしたか。
EJ ラグビーのキャプテンを大別すると、オンフィールド、プレーで引っ張るタイプと、オフフィールド、グラウンド外でのマネジメントで力を発揮するタイプに分かれます。廣瀬は間違いなく後者で、私はその役割を求めていました。廣瀬が集団のコアとなり、メンバーは彼の発言に耳を傾ける。彼は自分の言葉で語る能力がありましたし、情熱がレトリックに結びついてました。
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photograph by Ichisei Hiramatsu