記事を
ブックマークする
「『荒ぶる』の不思議な力が」早大ラグビー部主将・権丈太郎の苦悩と「気合いたい!」の物語<同級生は五郎丸歩&畠山健介>
激しい横殴りの雨が満身創痍の体を容赦なく叩く。凍てつくような寒さが、武者震いに追い打ちをかける。
2008年1月12日、国立競技場で行われたラグビー全国大学選手権決勝。前年、関東学院大に3連覇を阻まれ、「どんな状況でも50─0で勝つチーム」を目指して雪辱に全てを懸けてきた早稲田にとって、この悪天候はむしろ相応しいものだった。相手は慶應だったが、日本一になること、つまり「荒ぶる」を獲ることだけを考えていた。
強烈な風下に置かれた前半は苦しい時間帯が続き、7─3で折り返す。後半はキックで敵陣に入り、休まず前に出続けるディフェンスと最大の武器だったFWの強さで圧倒、26─6と慶應を突き放した。試合終了のホイッスルが鳴った瞬間、副将の五郎丸歩が、もう一人の副将畠山健介が、グラウンドにいた多くの選手たちが涙に咽んだ。
だが、主将の権丈太郎だけは、すぐには泣けなかった。
「本当にこれでいいんだろうか……」
主将を務めた1年間、彼はぐずつく空模様のように、いつも悩んでいた。
「絶対、許せねぇ!」五郎丸の怒り
'07年の春――。権丈率いる「権丈組」は途轍もない危機感からスタートした。
スター揃いで「優勝間違いなし」と言われていた前年度のチームが関東学院大に屈し、出場していた権丈らは泣き崩れる4年生の姿を目の当たりにした。だが、常勝を義務づけられていた早稲田が負けることの本当の意味を知ったのは、その後、都内のホテルで開催された「お疲れ様会」でのことだ。OBやその家族も集っての会合は、本来なら「祝勝会」になるはずだったが、お通夜のようにしんみりしていた。
「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています