日本代表のFWを牽引する2人が熱狂に沸いた1年前のW杯と、3年後のフランス大会に向けたビジョンを大いに語り合った。(初出:Number1013号稲垣啓太×堀江翔太「人生で一番ヤバかったあの試合」~最強のスクラム対談~)
1年前のちょうど今ごろ。誰もがラグビーの話をしていた。家族で、友人同士で、会社で、美容院で、カフェで、本当に誰も彼もが楕円球に心を奪われていた。
ずっと昔からそこにあったスポーツなのに、それはまるでこの国における新たなスポーツの誕生のようでもあった。
ジャパンの快進撃、火をつけたのは31名の屈強な戦士たちだった。
堀江翔太と稲垣啓太。日本代表のFW第1列として、文字通り命をかけて戦い抜いた男2人が、あの熱狂の日々をもう一度振り返り、そしてここから未来へと続いてゆく道を語ってくれた。
「負けた」ってことがずっと自分の中に残っている
――まず堀江さんから。1年前のW杯を振り返って最初に思い出すことは何ですか?
堀江 ラグビーファンの人がどんどん増えていったことですね。声をかけられることが試合のたびに増えていって。最後のほうは試合の後、ご飯を食べに出かけることもむずかしくなりました。開幕戦の頃は、余裕で宿舎のホテルの前にあるカフェにも行けたんですよ。開店10分前くらいに「いけますか?」って聞いたら、最初は「まだオープン前なんで」って言われたんですけど、3試合目くらいからは早めに行っても「どうぞどうぞ、座ってください」って(笑)。
――人間って怖いですね。
堀江 いやいや! 僕も逆の立場やったらそうしてると思いますし。むしろ人間っていいなって思いますよ(笑)。
――稲垣さんはW杯と言われたら何を思い出しますか?
稲垣 最後の南アフリカ戦です。「負けた」ってことがずっと自分の中に残っていて。
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photograph by Atsushi Kondo