博多の人・王貞治BACK NUMBER
「普通、そんな考えにならないですよ」生卵を投げつけられた王貞治がチームに伝えた衝撃の“神発言”とは…「彼らには、良心があったんだよ」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/07/10 11:08
ファンに卵を投げつけられるという衝撃の事件後のミーティングで王が発した訓示に、若田部や小久保ら選手たちは驚愕した
午前9時半頃から、メーン球場で全体アップが始まる。とはいえ、ランニングやストレッチが中心のメニューは、見ていても派手な動きもなく、面白みはない。1時間ほどでアップが終わると、各自のメニューに従い、メーン球場から別の場所へ移動するため、スタンドにいるよりも、動線のところで選手を待ち構えているファンが多かったりする。
「小久保さんも、さすがにアップは見なきゃいけない。『ジョー、あの時間に球場でサインをしてくれたら、外で待っている子供たちが、球場で練習を見てくれるようになるじゃないか。だからスタンドでやってくれないか?』って今年、言われたんですよ。それで俺、スタンドでサインするようになったんです」
ジャージ姿の城島が、スタンド中を歩き回っている。そこに、色紙を持ったファンが三々五々、集まって来る。即席のサイン会が開かれるスタンドにある意味、活気が出てくる。
監督自らが連日サイン会を
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1日の全体練習が終わり、選手が個別の練習に入ると、小久保は球場の外に出て、王と同じように机を置き、椅子に座って、ファンへのサイン会を連日実施した。ファンは「タカぬいぐるみくじ」というくじを1回2000円で引き、1~3等で大きさの変わる景品のぬいぐるみに小久保監督がサインをするという呼び掛けは、事実上の有料サイン会で、商魂たくましい感もあるのだが、球団スタッフに聞いてみると「そうしないと、際限なく続いてしまうんですよ」。
小久保は1時間近くにわたって、ファンと向き合い、サインをして「ありがとう」と声を掛ける。私も、各球団のキャンプに長年お邪魔しているが、監督自らのサイン会が連日開催されるのは、ソフトバンクしかないと断言してもいい。
「王貞治が、何十年も前にやっていたものを、僕らが、それをやりましょう、そうやっていきましょうと、まさに引き継がれていっているものだと思うんです」(城島)
昼の練習休み中には、主力選手のサイン会が日替わりで開催される。もちろん、柳田悠岐も、当たり前のように色紙にペンを走らせる。2015年から3年間、ソフトバンクに所属したメジャーから復帰直後の松坂大輔も、同じように“日替わりサイン会”に参加していた。
ファン一人一人に、丁寧に応対する小久保や城島の姿は、まさしく、ファンの思いを大事にすべきだという、あの「生卵事件」にも繋がってくる、貴重な教訓でもある。
〈つづく〉


