博多の人・王貞治BACK NUMBER
「普通、そんな考えにならないですよ」生卵を投げつけられた王貞治がチームに伝えた衝撃の“神発言”とは…「彼らには、良心があったんだよ」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2026/07/10 11:08
ファンに卵を投げつけられるという衝撃の事件後のミーティングで王が発した訓示に、若田部や小久保ら選手たちは驚愕した
若田部の怒りも、そのベクトルはファンに向けられていた。
しかし、王は違った。その矢印を自分に向けろ、というのだ。そうすれば、あの過激な行動も、聞くに堪えないヤジですらも、自分たちへの叱咤激励、ファンの心の叫びだと捉えられるのだ。
表裏一体。カードを裏返せば、全く違う、正反対のメッセージが出てくるのだ。
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「監督は凄いな、と。そういう考えなのか、と。自分のことより、相手のことを思うという、すごい人だなと。今になってみれば、すごくいい勉強でしたよ。プロ野球選手はやっぱり、ファンあってのものなのだ、と」
さらなる「神発言」の伝説
城島健司は、後日談として、王の“さらなる発言”を聞いたという。
それは、小久保裕紀も若田部も異口同音に、同じニュアンスの話をしていたから、これもチームに受け継がれている“伝説”なのだろう。
彼らには、良心があったんだ。生卵は、球場に売っていないんだから、そこら辺に落ちている石でも構わんのだよ。でも、石だと我々が本当にケガをしてしまうから、ケガをしないように、生卵にしてくれたんだよ——。
城島の声のトーンが、ちょっとだけ上がった。
「普通、そんな考えにならないですよ。一番、はらわたが煮えくり返っているはずなんですよ。やっていいことじゃない。だって今、チームが負けたからって、そんなことするかと言ったら、しないでしょ? それはファンと言えないですよ。でも、あの人たちには良心があった、ケガしないように生卵にしたんだって。王貞治は、ホントにすごい人間です」
ファンを、応援してくれる人たちを、プロは大事にしなければいけない。
そのことはもちろん、言葉として、そしてプロとしての指針として、肝に銘じなければならない。しかし頭で分かっていても、しつこく付きまとわれたり、サインを求められたりすれば、時には面倒くさい。イラっとした思いが出てしまうのも、人間なら当たり前だ。

