博多の人・王貞治BACK NUMBER
「出て来て謝れ!」「辞めろ!」王貞治に投げつけられた“生卵”…球史に残る大事件はこうして起きた「すごい屈辱ですよ、世界の王に対して」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph bySankei Shimbun
posted2026/07/10 11:05
球団史に残る悪夢の事件。1996年5月9日の日生球場で、最下位に低迷する王ダイエーのバスをファンが取り囲み、生卵を……
「バスも立ち往生。前にもバーッと人がいる。そこにいたら、事故になる可能性があったんよ。だからとにかく、こっちも必死よ。そしたら、運転手さんもちょっとビビりながらやけど、バスを出してくれて……。事なきを得たんやけどね」(瀬戸山)
やっとの思いで球場を後にしたバスのフロントガラスにこびりついた卵の黄身と白身、そして白い殻は、何度もワイパーを動かしても拭い去れなかったという。
屈辱の車中と“伝説のミーティング”
小久保は、瀬戸山のすぐ後ろのシートに座っていたという。
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「あの光景、脳裏に焼き付いていますね。外の景色が全く何も見えない。窓に、黄身と白身と殻がへばりついていました。すごかったです」
屈辱にまみれたバスの車中で、誰もがやり切れない思いに襲われ、静まり返った車中で誰一人、口を開こうとはしなかったという。
大阪・中津の宿舎ホテルに到着した直後、全員ミーティングが招集された。
「もう、伝説になっていますけどね、あの時のミーティングは」
そう振り返った小久保は、その時の“王の訓示”に驚かされたという衝撃の思い出とともに、30年の時が経った今でも、そのメッセージの重さを痛感するのだと強調した。
ああやって怒ってくれるファンが、本物なんだ——。
「心の中でやっぱり、あんなファン、野球ファンじゃないって反発もありましたね。でもそれは『あんな奴らを見返してやろう』というのであれば、違った“負のエネルギー”の方になったと思うんです。
『我々が勝ったら、いの一番に喜んでくれるのは、ああいうファンなんだ』っていうことを僕らに伝えた王さんのセリフは、王さんにしか吐けなかったんじゃないですか。ファンのせいに一切しないで『自分たちのできることは勝つことだけである』ということを伝えた、いたってシンプルなミーティングでした。すごく心に残るというか、その時にいた人たちはみんな、そのミーティングのことを覚えているくらいですからね」
〈つづく〉

