NumberPREMIER ExBACK NUMBER
「なんだあのクレイジーなウェアは?」NIKEにとってACGとは何か…トレイルを走り、テントに泊まって考えた“アウトドアの本質”と空気を操るウェアの秘密
text by

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byNIKE
posted2026/06/10 06:00
NIKEが送り出す革新的なウェア「ラディカルエアフロー」
「ウェスタンステイツのレースの時は、本当にたくさんのACGメンバーがトレイル上で応援してくれたんだ。オレンジ色のウェアを着ていたり、旗を持っていたりするので、走っていてもすぐにわかる(笑)。彼らはアイスベストを持っていたり、声をかけてくれたりと必要なサポートをしてくれるだけでなく、本当の意味で仲間として支えてくれた。すごく深くトレイルランニングにコミットして、僕をサポートしてくれているんだ」
ACGのメンバーは、トレイルを走り、山を登り、マウンテンバイクを漕ぎ、そしてフライフィッシングを愛している。そこにはグローバル企業の一社員としての一面だけではなく、アウトドア好きの1人の人間の顔がはっきりと見えるのだ。
わずかに焚火の香りが残る、薄緑色のフリース
「Gorge Waterfalls」30kmのスタート地点、僕はあるものを「捨て」て走り出していた。
ADVERTISEMENT
それは古いACGの緑色のフリースだった。自分のものではない。今回の取材でとてもお世話になったNIKEの女性社員のものだった。
今回、スタート地点には選手全員、バスで向かうことになっていた(いかにもアメリカな黄色いスクールバスだ)。バスに向かおうとする筆者がラディカル エアフローの下にベースレイヤーだけを身に着けていたのを見かねたのか、彼女は自分のテントの中を探り、薄いグリーンのフリースを渡してくれた。
「体を冷やさないほうがいいわよ。これは5年くらい着ている古いものだし、スタート地点に置いてきていいから」
「え、でも…」と言うと「No problem」と力強い笑顔が返ってきた。
彼女はアウトドアへの深い愛を持っている。時間のある週末はトレイルを走り、昨年のウェスタンステイツにはボランティアとして参加。憧れのレースは「Hardrock100」と語り、僕や韓国から来たメディアの人たちにオレゴンのトレイルレースを何本も推薦してくれた。
車を運転しながら見せたキビキビとしたハンドルさばきと、力強いアクセルワーク、そして駐車スペースの確保の仕方。100kmを走るクレイジーカロを応援するためにエイドステーションを巡る際には、何度もアウトドアフィールドへの慣れとその場所を共有する人たちへの愛情が透けていた。
そんな彼女が貸してくれたフリースを、バスに乗る前にラディカル エアフローの上に重ねて着た。バス移動の40分、スタート会場での30分。着ていた時間はわずか1時間程度だったけれど、忘れられないフリースになった。
すこしくたびれたシルエット。わずかに残る焚火の香り。ずっと自分が着ていたかのような心地よさ。そのフリースには、レースを走るランナーを第一に考える優しさ、そしてトレイルランニングというスポーツを共有しようという意思が込められていた。
最新のイノベーションが詰め込まれたメッシュ状のシャツと、アウトドアを愛する人が貸してくれたフリース。
オレゴンで身に着けた2枚のウェアには、「ACG」が詰まっていた。




