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「なんだあのクレイジーなウェアは?」NIKEにとってACGとは何か…トレイルを走り、テントに泊まって考えた“アウトドアの本質”と空気を操るウェアの秘密

posted2026/06/10 06:00

 
「なんだあのクレイジーなウェアは?」NIKEにとってACGとは何か…トレイルを走り、テントに泊まって考えた“アウトドアの本質”と空気を操るウェアの秘密<Number Web> photograph by NIKE

NIKEが送り出す革新的なウェア「ラディカルエアフロー」

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涌井健策(Number編集部)

涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui

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NIKEの「ACG」が大きく姿を変えている。従来はファッションアイテムというイメージもあったが、アウトドアギアを展開するブランドとしての色を強めている。ACGの本質はどこにあるのか。アメリカ・オレゴンで開発現場を訪ね、社員の話を聞き、テントに泊まり、注目のアイテムを着用しながらトレイルを走って考えてみた。

「10、9、8、7…」

 4月中旬、アメリカ・オレゴン州。コロンビア川沿いの渓谷地帯で、合計3日間開催されるトレイルランニングレース「Gorge Waterfalls」が幕を開けようとしていた。

 30kmレースのスタート地点は500人ほどのランナーでにぎわっていたが、喧噪というほどでもなく、大きな木々の合間に静かな興奮が満ちている。スタートゲート付近では、NIKEやHOKA、Onがサポートしているトップ選手たちがアップをしたり、カメラマンのインタビューに答えたりしているが、短いレースのため彼らの装備は驚くほど身軽だ。

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 自分の足元はNIKEの「Ultrafly」。カーボンプレート入りのレーシングモデルで、練習不足の自分が履くにはオーバースペックだと分かっていたが、前日に8㎞ほどトレイルを走ってみると予想以上に足にしっくりきて、路面へのしっかりとしたグリップも感じられたために選択。ザックはなしで、小さいウエストポーチ、そしてショーツのポケットにスマートフォンと塩熱サプリやジェル、水の入ったフラスクを詰め込んだ。

 迷ったのは上半身のウェアだった。前夜はテント泊だったこともあり、朝は心なしか身体が温まりづらかった。そのため防寒を兼ねて、そしてレース中の汗冷え防止も考えて長袖のベースレイヤーを着用していたのだが、スタート直前に気温が少しずつ上がってきたこともあり、それを脱ぎ、ポーチに無理やり詰め込むことにした。

 上半身は1枚。寒いか、いや大丈夫そうだ。

Your shirt looks so nice! Is it good?

 主催者であるディラン・ボウマンが会場を盛り上げ、レースの創始者が「Gorge Waterfalls」の歴史を踏まえた話をする。スピーチの間は他に鳥のさえずりしか聞こえない静けさに包まれ、みんながこのエリアの自然と歴史に思いを馳せているようだった。スピーチが終わるとあたたかな拍手に包まれ、そしてカウントダウンが始まった。

「…4、3、2、1、Puuuuuuuu!!!!!」

 ホーンが渓谷に鳴り響き、トップ選手は驚くべきスピードで飛び出していく。スタート直後から上りになるのだが、位置取りを競うF1のような動きをする選手たちに思わず笑ってしまった。

 序盤からレース名の通りいくつも滝の横にあるトレイルを通過していく。観光地になっていて多くの人が集まっている滝もあれば、ハイカーしかいない暗くて静かな滝もある。初めて走るアメリカのトレイルを必要以上にキョロキョロと観察しながら、グッと上がっていく心拍数が落ち着くポイント、つまり自分が長く走れそうなスピードを探り、何人かの選手を抜き、それ以上の数に抜かれていく。

 5㎞ほどで前後を走る顔ぶれがだいたい固まってくると、自分の体も温まり、心拍数もある一定のゾーンで安定してきた。そうすると周りの選手と少し会話ができる。浮石への注意喚起、お互いのコンディションの確認、簡単な挨拶。そんな短いやりとりが中心だが、2、3名からこんなことを言われた。

「Your shirt looks so nice! Is it good?」

 真っ白で、大きな目のメッシュ構造を持った人目を引くデザイン。真ん中に配置された三角形のロゴ。笑顔で「Thank you!」「Very comfortable」と返すが、このタイミングではNIKEと契約したトップ選手しか着用していないはずのものなので、ゆっくりとしたスピードで走っているアジア人が着ているのが不思議だったのかもしれない。

「Gorge Waterfalls」のコースレイアウトはとても変化に富んでいた。大きなアップダウンがあるわけではないが、路面状況は変化に富んでいて、滝の裏側のトレイルを走ったり、滝つぼ近くでシューズを完全に濡らしながら冷たい水の川を徒渉したり。ロード区間を挟みつつも、西海岸のロングトレイルPCT(パシフィック・クレスト・トレイル)の一部を走れたのもアメリカのアウトドアカルチャーに触れられたようで嬉しかった。

 滝が多いのにどこか渇いた印象の景色、何気ない英語での会話、足元の路面から感じる海外のトレイルを走っているという興奮、そしてその興奮では到底ごまかしきれない自分の心肺機能と脚力の限界。ポジティブ、ネガティブ、双方をいったりきたりする自分を意識しながら、日本のトレイルレースを走っていても後半で悟るように「結局、次の一歩を踏み出すしかない」という気持ちに自然となり、重くなっていく脚を動かしていく。

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