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オリンピックPRESSBACK NUMBER
「森ちゃんが亡くなってから1年しんどかった」池田久美子が26歳で他界した親友に誓った五輪出場「おばあちゃんになっても砲丸を投げたいと…」
posted2024/08/09 11:03
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Jun Tsukida/AFLO SPORT
森千夏さんが26歳という若さでこの世を去った後、「彼女の分まで」という強い想いを持って競技に取り組んでいた井村(旧姓池田)久美子さんだったが、心にぽっかりと穴が空いたような感覚に苛まれた。
「亡くなって1年間がしんどかったですね。なんでも言い合える森ちゃんがいなくなって、すべてをさらけ出す人がいなくなってしまって」
実は森さんが亡くなる1年前には、父親を亡くしていた井村さん。「その時もなかなか受け入れられなかった」のだという。
「でも受け入れないと前には進めないことも分かっていて。父も森ちゃんも闘病中によく言っていたのは『こっちは気にしないで、練習をしなさい!』ということでした」
父や森さんのために自分ができることは何なのか――。
「トレーニングをきっちりすることなんだって思って。そんな私を介して、父や森ちゃんが少しでも元気になってくれたらという思いもありました」
日本記録で優勝しても「次は7mだね」
森さんが闘病中だった2006年5月の国際グランプリ大阪大会。井村さんは女子走り幅跳びで6m86cmの日本記録(当時)を樹立し、見事優勝を果たした。
いつもならスタートから着地するまでの一連の動作はすべて記憶している。ただ、この時だけは「その1本だけ手に力が入って、気づいたときにはすでに着地していました」。
記録が出た瞬間は、ようやく日本記録を出せた喜びととともに、森さんと同じ日本記録保持者になったうれしさ、やっと彼女に追いつくことができたという思いがこみあげてきたという。闘病中の親友の存在が大きなパワーとなり、そっと背中を押してくれた。
「森ちゃんから『おめでとう』って連絡が来たんですが、すぐに『次は7mだね。私は20mで』って。おめでとうといってくれる人はたくさんいましたけど、そんなふうにすぐに発破をかけてくれるのは、やっぱり森ちゃんだけでした」