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「自分の能力を過小評価していた」大迫傑31歳が明かすマラソンランナーの葛藤「今の僕に必要なのは…」「攻撃的な発言は意味ないなと思って」
posted2023/03/12 11:00
現役復帰後、2戦目となる東京マラソンを2時間6分13秒と自己3番目の記録で走りきった大迫傑。レース前にマラソンランナーとして秘めた葛藤を明かしていた
text by
涌井健策（Number編集部）Kensaku Wakui
photograph by
Shota Matsumoto
MGCは「まだ出場するか決めていない」
大迫傑は、やはり大迫傑だ――。
そんな声が東京マラソンゴール直後のミックスゾーンでは聞こえてきた。
自己3番目の2時間6分13秒というタイムで、9位でフィニッシュ。10月に開催されるMGCの出場権も獲得した。
レース運びも、前半は先頭集団の後方で落ち着いて走り、目立たず、余分なエネルギーを使わず、30㎞過ぎの勝負所を待っているように見えた。30㎞手前で井上大仁、そして山下一貴が先頭を引っ張る場面もあったが、そこでも自重して、持ちタイムのいい外国人招待ランナーの動きを待った。最後は「差し込みがきて失速しました」（本人）というが、多くの有力日本人ランナーがそれまでに失速し、集団から遅れていく中での粘りと知性を感じさせる走りで、現役復帰2戦目にして存在感を十分に発揮したと言えるだろう。
レース後のコメントも落ち着いていた。
「（前回レースのニューヨークシティマラソン＝NYCから）4カ月というのは、自分の中でチャレンジングな準備期間だったので、どこまで仕上がるかわからなかった。そのなかではタイムは非常によかったかな、と。最後の4kmですべて決まったと思うので、そこで対応できなかったところが……ただ、しっかりと今後準備していけばそこにも対応できると思います。今回は“落とし所”としてはいいところだったんじゃないですか」
「山下選手、強いですよね。途中で引っ張って、最後まで走り切るのは。いま何歳ですか？ 25歳？ ああそうですか。若手も育ってきていて、僕としても頑張っていかないとという気持ちになりますよね」
「（MGCは）まだ出場するか決めてないです。1回休んでみてから、出るかどうかも含めてコーチと考えていきたい」
復帰戦となった6メジャーズのNYCマラソンでの5位入賞、重圧のかかる国内レースでの貫禄の走り。昨年2月に現役復帰を表明してから、大迫はここまで順調にステップを踏んできているように見える。
だが、本人の中には、マラソンランナーとしての秘めた葛藤があった。
レースの約1カ月前、ケニアで合宿中の大迫に話を聞いていると、東京マラソンへの出場も迷った時期があったという。
どうして東京への出場を決めたのか。MGCをどう捉えているのか。どうやって世界との差を縮めているのか。
日本の長距離界を牽引し続ける男の声に耳を傾けた。
自分の能力を過小評価していた…とは？
――少し前に話を聞いたときに、今季はトラックに軸足を置いて、自分自身のスピードを磨きなおしていこう、と言っていました。その理由も含めて説得力があったし、大迫傑らしい、とも思いました。ただ、東京マラソンに出場します。これは何か心境の変化があったんですか？
