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「なんだあのクレイジーなウェアは?」NIKEにとってACGとは何か…トレイルを走り、テントに泊まって考えた“アウトドアの本質”と空気を操るウェアの秘密
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涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph byNIKE
posted2026/06/10 06:00
NIKEが送り出す革新的なウェア「ラディカルエアフロー」
ゴールがあるのはカスケードロック。オレゴン州とワシントン州の州境にあり、前夜にテント泊をした集落だ。雄大なコロンビア川沿いにあり、いくつかのレストランや有名なアイスクリーム屋があり、鉄骨で足元がスケスケの「Bridge of God」という凄い名前のついた橋が架かっている。レースのヘッドクォーター(事務局)が置かれたブルワリーを通りすぎ、川沿いに設置されたフィニッシュ地点が見えてくると、「Kensaku from JAPAN! Come on!!」というアナウンスが聞こえてきた。
タイムは3時間30分05秒、467人中92位。狙っていたレースではないのに、ゴールをすることで心を満たす大きな達成感、そして脚、特にふくらはぎを中心とした嘘偽りのない疲労感。レースを走ることの意味が頭を体を満たしていく。
だが、レースを振り返ったときに心の中に浮かんだ最も大きな感情は、3時間半、今日の自分の相棒となってくれたシャツ、ACG「ラディカル エアフロー」への疑問、そして大きな驚きだった。
登山家たちは破損したLDVをナイキに郵送した
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ACGをご存知だろうか?
「All Conditions Gear」の略で、どんな天候・状況でも使えるギアという意味となり、NIKEの中でアウトドアプロダクトを扱う別ブランドの名前だ。これまでも「ナイキ トレイル」としてトレイルランニングシューズには根強いファンがいたし、ファッションラバーの中ではアウトドアテイストを纏った、雑な言い方だが「おしゃれなNIKE」として認知されてきたように思う。
ただ歴史は古く、その原点を示すような写真が1978年に撮影されている。
この写真は世界で2番目に高い山・K2のベースキャンプで撮影されたもの。2人のアメリカ人登山家が装備に囲まれて座り、背後には雪に覆われたK2の稜線が見えている。そして彼らが履いている黄色いシューズは、NIKEの長距離ランニングシューズ「ロング ディスタンス ベクター」(LDV)だった。
なぜヒマラヤの8000m峰に挑むクライマーが、登山靴ではなく、当時まだ新興ブランドに近かったNIKEのシューズを選んだのだろうか。当時、NIKEはアウトドア市場に参入すらしていなかったのだ。写真に写っているアルパインクライマー、リック・リッジウェイは当時その理由を次のように話していたという。
<LDVの良いところは、岩の上を跳ねるように移動できることです。ベースキャンプまでの110 マイルに及ぶアプローチは荒れたトレイルが多く、岩を飛び移ることも必要でした。LDVは通気性も良く、従来の硬いトレッキングシューズより機能的に優れていたんです。ベースキャンプに到着する頃には、ボロボロになっていたこと、想像できますよね?>
下山する頃には、布製のアッパーは崩壊寸前。リッジウェイらはテープと接着剤でシューズを補修しながら、長い道のりを歩いた。
<あれほどの高所に、酸素なしで長期間いるのは本当に大変でした。その下山の途中、このシューズを実用的なトレッキングシューズに改良できるのではないか、という話を始めたのです>
帰国後、登山家たちは破損したLDVをナイキに郵送。そこにはシューズの軽量性と柔軟性を保ったまま、より耐久性の高いソールやアッパーに改良するための「提案」が添えられており、これらのメモがナイキ初のアウトドア フットウェアライン、そして後にACGの誕生のきっかけとなったという(1989年のことだ)。
ACGの新しい顔「ラディカル エアフロー」
そのACGが今年に入ってリブランディングを実施。これまでナイキトレイルと呼ばれていたシリーズと統合、イメージも刷新され、大きく加速している。
「Ultrafly」など話題性のあるシューズやゼガマトレイル、ペガサストレイルといった定番の大幅な改良(個人的にはゼガマの履き心地の良さに驚いている)、トレイルランニングのトップチーム「All Conditions Racing Department」の立ち上げとそのチームへの相次ぐ新規契約選手の加入、ミラノ・コルティナ五輪期間中のドロミテ登山鉄道のラッピング。ロゴは変わっていないものの、明らかに露出が増え、会社としてグッと力を注いでいるのが伝わってきていた。
その新しいACGの「顔」ともいうべきアイテムが、筆者がレースで着用したメッシュ構造のウェア「ラディカル エアフロー」だろう。



