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「100%出し切れなかった」坂本花織とアリサ・リュウの勝敗を分けた“たった一つの差”…銀メダル獲得だけではない、最後の五輪で見えた“本当のスゴさ”
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2026/02/20 17:04
ミラノ五輪女子シングルで銀メダルを獲得した坂本花織
「坂本さんがよく話しかけてくれて…」
公式練習でも中井や千葉百音に気を配り、いざ試合でも演技を前にして、若い選手たちを気にかけた。笑顔とともに、明るい雰囲気をつくりあげ、皆が力を出せるよう、心を砕いた。
チームを盛り上げよう、力づけようとするふるまいが、いつも、どのときもあった。それが当然の役割であるように、むしろ自然なことであるように、行動し続けた。
それはオリンピックに始まったことではない。いつも、周囲の選手に気を配る姿があった。
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ジュニアのカテゴリーながら全日本選手権で活躍し脚光を浴びた選手を教えるコーチが、「(大会の間)坂本さんがよく話しかけてくれて、とても助かりました」と感謝していたことがある。そうした話は1つ、2つではとうていおさまらない。
深いところに刻まれた責任感とともに、坂本の人となりがそこにあった。容易に得がたいリーダーシップがあった。
「チームジャパンが明るく過ごせたらいいなって思って。最後、演技としてはやりきれなかったんですけど、周りが『花織がいてよかった』って言ってくれるのは、すごくうれしいです」
五輪最多タイの4つのメダル
今シーズン限りでの引退を表明し、最後のオリンピックと見定めていたミラノ・コルティナ五輪。
坂本が思い描いていた終幕とはならなかった。自ら選んだフリー『愛の讃歌』の完成形を見せるという目標はかなわなかった。
それでも日本女子初となる2大会連続での表彰台、鍵山優真とともに五輪最多タイの計4つのメダルを手にした記録は残り続ける。
そしてチームを太陽として照らし続け、大会を駆け抜けた。
3度目の、最後のオリンピックは、坂本花織がいかなる選手であるのか、その存在を強く印象付け、忘れがたい記憶となった大会であった。


