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「100%出し切れなかった」坂本花織とアリサ・リュウの勝敗を分けた“たった一つの差”…銀メダル獲得だけではない、最後の五輪で見えた“本当のスゴさ”
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松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2026/02/20 17:04
ミラノ五輪女子シングルで銀メダルを獲得した坂本花織
最後の五輪でも、「悔しい」と繰り返した
一方で、それだけの点数を失いながら、それでもフリーの得点差は2.53点とリュウに大きな差をつけられることなく、最終的に合計得点でも僅差で終えた。それは別の側面もあらためて浮き上がらせる。坂本がトータルで磨いてきたスケートのレベルの高さだ。
フリーの技術点における「できばえ点」は、合計で16.68点のプラスを得た。リュウの14.8点を上回り全選手中、トップだ。また演技構成点もただ一人、3項目のすべてで9点台、計74.84点に達した。これも全選手中トップだった。技術、表現、その双方で時間をかけて地力を高めてきた成果にほかならない。
「これだけ悔しい思いをしても銀メダルを獲れたのは、今までの頑張りが実ったのかなと思います」
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その言葉の通り、努力は数字として明確に表れている。1つうまくいかなかったとしても、ときに涙するほどの重圧に苦しみながら、それを打破することができた、と言えるだけの演技でもある。
悔しさは容易に消えることはない。それでも、こう語る。
「4年前、北京オリンピックで奇跡的な銅メダルを獲って、そこから4年経って、こうやって金を目指して獲れなくて銀になって。1つメダルが上がっているのに『悔しい』というのは、この4年間いろんな経験をして、積み重ねてきた成長なのかなって思うので、そこはほめたいなって思います」
ミラノ五輪を通して、チームを支え続けた姿
「敗れてなお強し」という言い回しがある。そんな言葉も思い出される演技が、氷上にあった。
強さは、この日の演技だけでなく、大会を通じて示されたものでもあった。
団体戦では、これまでのオリンピックでは2名で分担してきたショートプログラム、フリー両方への出場を打診され、快諾。どちらも1位となり、日本の銀メダル獲得に大きな役割を果たした。
自身の演技で果たした役割にとどまらない。チームメイトの演技に心をこめて声援をおくり、涙しながら称える姿があった。
「初めてオリンピックに出る選手も多いので、自分の特技でもある場を盛り上げることを生かすところかなと。オリンピックという舞台を楽しめるように場の雰囲気を明るくできたらなと思っています」
団体戦へ向けて語った抱負を実践すべく、力を尽くした。
団体戦が終わっても、その姿勢は変わらない。自身の個人戦を控えている中ても、連日、各種目の試合で会場に応援に駆け付け、観客席から声援を送り続けた。



