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フィギュアスケートPRESSBACK NUMBER
「非力くん」と呼ばれていたのに…木原龍一の人生を変えた決断「三浦璃来との運命の出会い」「大胸筋がムキムキに」恩師が振り返る葛藤と成長
text by

石井宏美Hiromi Ishii
photograph byGetty Images
posted2026/02/17 17:04
20歳、シングル時代の木原龍一(2012年)
しかし2012年3月、シニアデビュー戦となったチャレンジカップで、2位となったジェレミー・アボット(アメリカ)の姿に感銘を受け、木原はシングルの選手としてシニアで頑張っていくことを決意する。
「ジェレミー・アボットの演技を目の当たりにして、伸びないとか年齢を重ねているから……と悩んでいる場合じゃないって気持ちを切り替えたようで、シングルで頑張るという決意が固まっていました」
ペア転向の背中を押した恩師の言葉
シングルの選手として頑張る――。やる気満々で帰国したところにペア転向の話が来た。当初木原は葛藤していたという。だからこそ決断まで1年近く答えを出せなかった。そんなときに気持ちを後押ししたのが成瀬さんだった。
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「ペアをやってもシングルをやっても、龍一には戻ってくる場所はあるから。せっかくのチャンスだからチャレンジしてみるのもありだと思う。誰にでも与えられる挑戦権ではなく、限られた挑戦権だからやってみたらどう? そんな会話をしました。ただ、その後半年ぐらいは、全くその話にはお互いに触れませんでしたね」
シングルを続けるのか、ペアに転向するのか。木原が決めたことであれば、成瀬さんはどちらでもいいと考えていた。決断に時間がかかっても返事を急かせるようなことはしなかった。自分が決断したことでなければ、壁にぶつかったときに乗り越えられないと考えたからだ。
「他人が決めたら踏ん張り切れないんですよ。でも、自分が決めたことなら、頑張るのは当たり前のことですし、困難があっても踏ん張り切れます。だいぶ経った頃に『決めるのは自分だよ』とポンと突き放したら、『僕、(ペアを)やります! 挑戦します』と。決断した後の行動は早かったですね」
「非力くん」が筋肉ムキムキに…
2013年の国体を最後にシングルから引退した木原は、高橋とアメリカ・デトロイトへ出発。佐藤有香、ジェイソン・ダンジェンのもとで基礎を学んだ。
高橋とのペア初年度の2013-2014シーズン。成瀬さんはスケートカナダに出場する鈴木明子さんと共に早めに出発し、デトロイトを訪れた。出発してわずか数カ月間だったが、木原の変貌に驚きを隠せなかったという。
「全日本の合宿で体力測定をすると、いつも計測し直すほど握力や背筋の数値が低かったので、『非力くん』と呼ばれるほどだったんです。それが『北斗の拳』のキャラのように筋肉がムキムキになっていて。“筋肉ってこんなにつくものなの!?”と驚きましたね。首や肩、大胸筋が、以前とは全く違っていました。それまで着用していたスーツも着られなくなったので、私たちがデトロイトに行ったときに新調したんですよ」


