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平野歩夢「あの不可解採点」からの“怒りのラン”が切り開いたミラノ五輪の“新時代”…北京でホワイトが託したもの「これからはアユムが」
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矢内由美子Yumiko Yanai
photograph byKaoru Watanabe/JMPA
posted2026/02/25 17:00
北京五輪「あの2本目の不可解採点」から平野が決めたランがミラノ五輪の超ハイレベルな戦いを切り開いた。北京の快挙をプレイバックする
ホワイトも「これからはアユムの時代」
ジャッジとの戦いともなった3本目でジェームスを上回る点を出し、逆転勝利を収めた試合展開は、4年前の平昌五輪で、3本目に平野を大逆転し、3度目の金メダルを手にしたショーン・ホワイト(米国)の姿と重なるものだった。
今回、35歳で5度目の五輪出場を果たして4位でフィニッシュしたスーパースターのホワイトは、23歳の平野がそれこそ子供の頃から憧れてきたレジェンド。
試合後、平野は、今大会を最後に五輪の舞台から退くホワイトと抱擁をかわした。
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「ショーンが見せてくれたチャレンジは、彼にしかできないことだった。彼は平昌五輪もその前の歴史も含めて、ずっとヒーロー。彼のような経験をしている人は、孤独だったり、自分との戦いだったりというものを強く持っているというのが、ショーンから学んだことの一つ。僕からも、自分の滑りで何か彼に伝えられたらと思っていた。彼のチャレンジに僕はいつも刺激を受けてきた」
リスペクトの思いを噛みしめるように口に出す平野に対して、ホワイトも「これからはアユムの時代だ」とバトンを託した。
平野が切り開いた新たな時代
平野が切り開いたトリプルコークの時代。今回の北京五輪で使うことができたのは世界中で平野だけだったが、昨年10、11月の欧州合宿でこの大技をメイクする姿を目の当たりにしていたジャパンチームのメンバーたちはその時点で闘志に火がつき、すでに戸塚と平野流佳の2人は練習で成功している。ジェームスも挑戦の準備をしていると話している。また、平野の弟の海祝は、誰よりも高さを追求する独自のスタイルを磨き上げることで、高みを目指していこうとしている。
平野は言う。
「この4年間は常に限界にぶつかっているようだったけど、自分しかやっていないことにチャレンジしたいというこだわりがあった。思い通りにいかない日々が続き、今までで一番苦しかったけど、自分に負けなかったし、何かを諦めたことは一度もなかった。トリプルコークが生まれたことで、時代もまた変わったんじゃないかなと思う」
未知の境界線を越えた者だけがまとう輝きがまぶしかった。

