#1046
巻頭特集

記事を
ブックマークする

[東京五輪を糧に]平野歩夢「超大技で越えた境界線」

2022/02/24
誰にもできないことに挑み続ける。自分の限界をプッシュし続けてきた男が、3回目の挑戦でついに五輪の頂点に登りつめた。スケートボードで夏季五輪に出場し、さらに誰も成し得なかった最高難度の大技を完成させ、自らの時代の到来を知らしめた。

 沸き上がる怒りを、有無をいわせぬパフォーマンスに換え、すべてをねじ伏せた。

 23歳にして実に3度目の冬季五輪出場。スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢が繰り出した誰ひとり真似のできないルーティンに、熱い視線が注がれた。気温マイナス12度。極寒でありながら、パイプを見上げる者は、誰ひとり寒さを感じていないようだった。

 1本目。予選1位の平野は決勝に進んだ12人の最終演技者として登場した。ドロップインから最初に繰り出した「トリプルコーク1440(軸を傾けた縦3回転を含む4回転)」が成功すると、会場がどよめいた。大会では平野だけが成功させている大技だ。

「ワン、ツー、スリー!」「アン、ドゥ、トロワ!」「トリプルコークだ!」

 スノーボード史に残る大技を目撃した喜びをかみしめるように、回転数を数えるいくつもの言語が会場に飛び交った。途中で転倒したため、得点は33.75点と低かったが、次につながるランとなった。

 2本目。今度は会場に大ブーイングが起きた。平野は「フロントサイド・トリプルコーク1440」から始まり、「キャブ・ダブルコーク1440」につなげ、続く2発はフロントサイドとバックサイドの「ダブルコーク1260」の連続技。最後に「フロントサイド・ダブルコーク1440」で締めくくる史上最高難度のルーティンを滑りきったが、予選2位のスコッティ・ジェームス(オーストラリア)が出した92.50点を下回る91.75点というまさかのスコアが表示されたのだ。

特製トートバッグ付き!

「雑誌プラン」にご加入いただくと、全員にNumber特製トートバッグをプレゼント。
※送付はお申し込み翌月の中旬を予定しています

photograph by Kaoru Watanabe/JMPA

0

0

0

次記事