誰にもできないことに挑み続ける。自分の限界をプッシュし続けてきた男が、3回目の挑戦でついに五輪の頂点に登りつめた。スケートボードで夏季五輪に出場し、さらに誰も成し得なかった最高難度の大技を完成させ、自らの時代の到来を知らしめた。
沸き上がる怒りを、有無をいわせぬパフォーマンスに換え、すべてをねじ伏せた。
23歳にして実に3度目の冬季五輪出場。スノーボード男子ハーフパイプの平野歩夢が繰り出した誰ひとり真似のできないルーティンに、熱い視線が注がれた。気温マイナス12度。極寒でありながら、パイプを見上げる者は、誰ひとり寒さを感じていないようだった。
1本目。予選1位の平野は決勝に進んだ12人の最終演技者として登場した。ドロップインから最初に繰り出した「トリプルコーク1440(軸を傾けた縦3回転を含む4回転)」が成功すると、会場がどよめいた。大会では平野だけが成功させている大技だ。
「ワン、ツー、スリー!」「アン、ドゥ、トロワ!」「トリプルコークだ!」
スノーボード史に残る大技を目撃した喜びをかみしめるように、回転数を数えるいくつもの言語が会場に飛び交った。途中で転倒したため、得点は33.75点と低かったが、次につながるランとなった。
2本目。今度は会場に大ブーイングが起きた。平野は「フロントサイド・トリプルコーク1440」から始まり、「キャブ・ダブルコーク1440」につなげ、続く2発はフロントサイドとバックサイドの「ダブルコーク1260」の連続技。最後に「フロントサイド・ダブルコーク1440」で締めくくる史上最高難度のルーティンを滑りきったが、予選2位のスコッティ・ジェームス(オーストラリア)が出した92.50点を下回る91.75点というまさかのスコアが表示されたのだ。
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photograph by Kaoru Watanabe/JMPA