野球クロスロードBACK NUMBER
ダルビッシュに学ぶ、若手への気配り。
勝利のためのコミュニケーション術。
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byMiki Fukano
posted2011/02/13 08:00
沖縄県・名護にて。プロ野球選手として初めてのキャンプをこなす斎藤佑樹らに、時間をかけ細かいアドバイスを送るダルビッシュ有
多くの後輩を引き連れる「ダルビッシュ軍団」の実態。
このような「兄貴肌」から、ダルビッシュと仲が良い選手たちは、一部で「ダルビッシュ軍団」と呼ばれている。とはいえ、当然のことながら周囲に悪影響を及ぼしているわけではない。
清原和博が巨人時代、多くの後輩に囲まれていたため「清原軍団」とメディアから揶揄されていたが、筆頭団員扱いされていた元木大介は、「軍団」についてこのように否定していた。
「本人たちはそんなこと思っていませんでしたよ。キヨさんに魅力があるから人が集まってくるんです。二軍の選手でも悩みがあれば協力を惜しまなかったし、誰にでもフレンドリーに声をかけていましたからね」
これは、ダルビッシュにも言えることだ。木下や吉川とのやり取りも然り。東北高校時代のチームメートの話によれば、その当時から気配りの基盤はしっかりできていたという。
「東北高校は、他の高校に比べると上下関係が厳しくなかったせいもあって、有も同級生はもちろん、後輩にもすごく気を遣ってくれました。新チームになってキャプテンに選ばれたんですが、そんな有だからこそチームはひとつにまとまれたんです」
エースとして、先輩として考える。勝てるチームの雰囲気作り。
そんな後輩想いのダルビッシュに、以前、「それは意識してやっていることなのか?」と聞いたことがある。すると彼は、「当たり前です」と言わんばかりに、はっきりとこう述べてくれた。
「1年目に一軍に上げてもらったときは、年が離れた方と溶け込める雰囲気っていうのがあんまりなかったんで。だから、そうならないように、自分から年下の選手にしっかりと声をかけて、ついてきてもらうようにはしています」
マウンドでの姿はもちろん、日頃のトレーニングやサプリメントを摂取するなど徹底した肉体、体調管理に余念がないダルビッシュは、見ているだけでも勉強になる。なにより、エース自ら歩み寄り、様々なアドバイスをするということは、若い選手にとっては幸運なことであり、モチベーションを高められる大きな要素にもなる。
日本ハムの覇権奪回に欠かせないもの。それは、ダルビッシュの右腕のみならず。きめ細やかな、若手への気配りも重要なカギとなってくる。