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「防御率0.17は自分の実力ではない」50試合連続無失点の阪神無双リリーフ・石井大智が明かした”驚きの自己評価” 本人が気づいていた「自分に足りないもの」
text by

佐井陽介Yosuke Sai
photograph byNanae Suzuki
posted2026/01/20 17:01
2025年のレギュラーシーズンでは防御率0.17の圧倒的成績を残した阪神の石井大智だが、日本シリーズで痛恨の被弾。本人がいま明かす“涙の真相”とは…(第2回)
「ボールゾーンを振らせる能力が大事なことは重々承知の上で言いますけど、振ってもらえなければ全部ボール球ですからね。空振りするかしないか、打者に委ねる行為になってしまうのはちょっと……。もちろん、2ストライクになってボール球を3つ使える状況であれば、奪三振を狙った方がいいかもしれません。でも、走者を出したくない場面のフルカウントからボール球のフォークで空振り三振を奪えたとしても、僕の場合は『それって本当にリスクがなかったの?』と考えてしまうんです」
絶対に出塁させたくない状況でフルカウントになった。
ボールゾーンに沈むフォークで空振り三振を奪えれば、もちろん気分はいい。
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ただ、ストライクゾーンの直球で凡打に仕留められる可能性も高いのであれば、名を捨てて実を取る。
それが12球団屈指の注目度を誇る阪神で絶対的なセットアッパーを任される右腕の宿命なのである。
「たとえば走者を一塁に置いたとき、このボールを投げたらショートゴロになりそう、打順の巡り合わせ的に三振よりもゲッツーを取れた方がいいなと感じたら、無理に三振を狙いにいかないという考えになってきました」
複雑な胸中を押し殺すかのように、右腕はあえて淡々と言葉を並べた。
「もちろん、ショートゴロに打ち取ったはずの打球が三遊間を抜けてしまう可能性もあります。少しでもショートゴロになりやすいように工夫したあとは、運の要素に左右されてしまう部分もあります。ただ、中継ぎ投手は試行回数が少ない中、たとえ運の要素が介在したとしても、ベストな結果を導きだせたら大きく自分を助けられます。そんな考え方を『大人になってきた』と前向きにとらえていいのかどうかは分かりませんけどね」
一通りの説明を終えると、男はふと自虐的な笑みを浮かべた。
石井自身が気づいていた“自分に足りないもの”
防御率0.17という金字塔を打ち立てるまでに、心身の状態は何度となく危険水域に突入していた。本人が内情を明かすことはないが、おそらくコンディション不良を抱えながらのマウンドもあった。
投げたいボールではなく、満身創痍の状態でも抑えられるボールを優先する毎日。エゴを捨てて結果のみを追求した先には、誰も文句をつけようがない圧倒的な数字が待っていた。
だが、石井は気付いていた。
自分にはまだ足りないものがある。
だからだろうか。
2025年シーズンの最終日。あまりに残酷なフィナーレにもどこか達観していたのである。

