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「内容もひどくない」なぜカーショウ37歳は“速球145キロ未満”に衰えてもドジャースの窮地を救ったか…引退に涙フリーマン「それでも史上最高だ」
posted2025/12/27 06:02
2025年の本拠地最終登板で、ファンに向けてハグ・サインを送るクレイトン・カーショー。とてつもなく長く大きな喝采を浴びながらマウンドを降りた
text by

ジャック・ハリスJack Harris
photograph by
GINA FERAZZI/Los Angeles Times
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大リーグ(MLB)2025年シーズン。大谷翔平、山本由伸、佐々木朗希という3人の日本人スターを擁したドジャースが、21世紀初のワールドシリーズ連覇を達成した。
その陰で、伝説的な投手が引退を決断していた。ドジャースという名門球団一筋18年、サイ・ヤング賞3回、MVP1回のクレイトン・カーショウである。
37歳を迎えた左腕は、球速こそ衰えても老獪さと強靭なハートで今季レギュラーシーズンで10勝2敗、防御率3.53を記録。ブレイク・スネルにタイラー・グラスノー、佐々木朗希ら当初ローテーションと考えられていた先発投手が軒並みケガで離脱する窮地を救った。さらにレギュラーシーズン後のワールドシリーズでも、第3戦の12回、二死満塁の大ピンチを切り抜けた。この歴史的死闘での“ワンポイントリリーフ”が、結果的にカーショウにとっての現役ラスト登板となったことも語り継がれるだろう。
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そんなカーショウは、なぜ自分のタイミングでマウンドを去ることを選んだのか。地元紙『Los Angeles Times』が最後のシーズンに密着。本人、そして引退会見で涙を流した1歳年下の盟友フレディ・フリーマンらの言葉とともに紡ぐ。
今なら“好投しながらやめられる”
【「今は本当に心が穏やか」なぜカーショウは2025シーズンを最後と決めたのか】
クレイトン・カーショウは深く息をつき、左手でマイクをつかむと、部屋を見渡しながら小さく笑った。
「変な感じだな」
ドジャースで過ごした18年間、カーショウは常に自分にスポットライトが当たるのを警戒していた。それが今、大勢のチームメイト、コーチ、球団幹部、スタッフ、報道陣、そして妻のエレンと4人の子どもたちがみな、目の前に座っていた──その輝かしい現役生活を終えるという公式発表に立ち会うために。
「やめるよ」とカーショウは切り出した。
「引退する」
この決断に何年も悩みながら、ドジャースでプレーするためにと戻り続け、37歳のシーズンを迎えた将来の殿堂入り左腕は、ついにマウンドを去るという決断をきっぱりと言ってのけた。
今がそのとき、今なら好投しながらやめられると感じたのだ。

