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[ボビー・バレンタイン解説]連覇の立役者を生んだロバーツ監督の起用法
posted2025/12/27 09:00
第7戦、1点を追う9回1死から本塁打を放ち、優勝を引き寄せたロハス。試合終了後、トロフィーを高く掲げた
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ブラッド・レフトンBrad Lefton
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Getty Images
「この時代に、データ分析と選手起用の両方を上手くやる監督はデーブ・ロバーツのほかにいません」
そう語るのは、ロッテなど日米4球団で23シーズンにわたって指揮を執ったボビー・バレンタインだ。ワールドシリーズを解説する全米放送の番組に生出演した際、ドジャースのロバーツ監督を高く評価した。
しかし、このコメントはドジャースが連覇を決めたあとではなく、第1戦でブルージェイズに大敗したあとに出たものだ。
トロントでの第1戦。6回、アディソン・バージャーにシリーズ史上初の代打満塁本塁打を打たれるなど、ドジャースは4対11で手痛い敗戦を喫した。バレンタインが注目したのは、6回にドジャース先発のブレイク・スネルが四球、ヒット、死球で無死満塁とピンチを招いた場面だ。ここでロバーツは2週間も登板がなかった25歳のエメット・シーハンを投入。案の定、16球で3点を失い、なおも1死満塁でバージャーを迎えたところでベテラン左腕のアンソニー・バンダに代えたが、あえなく4球目に歴史的な一発を打たれた。
バレンタインが言う。
「ワールドシリーズで若手を初登板させるなら、丁寧に回の頭からでしょう。少なくとも無死満塁ではありませんね。スネルは5回まで84球でよく投げていたので、6回からシーハンに代えるのは十分にあり得たと思います。ひょっとしたらロバーツはブルペン陣への信頼を少し失っていて、リスクを承知でスネルから好投を搾り出そうとしたのでしょう。でも、もう果汁は残っていませんでしたね。無死一、二塁までロバーツは『よし、君に任せたぞ』と言いたかったと思いますが、次打者に死球を与えたら『オーノー、予期せぬ展開だ。次はどうしよう』と状況が変わってしまいました。ここは唯一、ロバーツが不用意だった点だと思います。今はデータの時代ですから、試合前にすべての展開を想定して継投が用意されていると言われますが、同点の6回にスネルが無死満塁で降板するというデータはなかったでしょう。事前に準備できなければ、もう祈るしかありません。ワールドシリーズの無死満塁の場面を、神様に任せたくはありませんよね」
こちらは雑誌『Number』の掲載記事です。
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