テレビに映らない大谷翔平:番記者日記BACK NUMBER
「悔しい形だった」大谷翔平が浴びた大ブーイングと3ラン…“中0日で涙のMVP”山本由伸は園田通訳に「どういうこと?」ドジャースWS連覇ウラ話
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柳原直之(スポーツニッポン)Naoyuki Yanagihara
photograph byNaoyuki Yanagihara
posted2025/11/27 06:02
WS優勝後にグラウンドでインタビューを受ける大谷。ドジャースが連覇を飾った1日は、“28時間”の出来事となった
同点の9回1死一、二塁から連投で6番手として登板。最初の打者アレハンドロ・カークに死球を与え、満塁でも慌てなかった。ドールトン・バーショを二ゴロ、アーニー・クレメントを中飛。ミゲル・ロハス、アンディ・パヘスの好守備もあって絶体絶命のピンチを切り抜けた。ウィル・スミスの勝ち越しソロ本塁打で5−4と勝ち越した延長11回1死一、三塁。カークのゴロをさばいた遊撃ムーキー・ベッツが二塁を踏み一塁転送で併殺を完成させると、全員が山本めがけて駆け出した。
背番号18を中心に歓喜の輪が広がった。
「みんなが自分のところに来てくれた時は、今までで一番の喜びを感じた。涙も久しぶりにあふれてきた」
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両手を天高く突き上げ、山本は声にならない叫び声を上げた。日本選手では松井秀喜以来、2人目のMVPを受賞。WSの胴上げ投手も2013年の上原浩治以来2人目だった。
由伸が世界一の投手…異論はないんじゃ
今季5度目のシャンパンファイト。山本を後ろから抱きかかえたのが大谷だった。
「彼が世界一の投手だと思っているし、チームもそう思っている。異論はないんじゃないかな」
大谷による世界で最高の賛辞だった。
移籍1年目の昨季に続くWS連覇について、大谷は感慨深げだった。
「本当にとんでもないゲーム。そういう試合で先発できたことが一つ光栄なこと。結果としては悔しい思いはしたけど、最後まで全員で諦めずに素晴らしい試合だった」
第1戦でWS初アーチ。第3戦では2本塁打4長打、4敬遠9出塁と記録的なプレーを続けた。MVPに輝いたナ・リーグ優勝決定シリーズも含めて、今ポストシーズン全17試合で1番に座り、8本塁打14打点と頂点へ牽引した。
「終わったばかりなので、今日、明日ぐらいはこの勝利に存分に浸りたい」
こう話した大谷は、第2戦から中5日で第6戦に先発し、「中0日」の第7戦で連投した山本について「どうやって投げたのか正直わからないですね」と笑っていた。この言葉には、報道陣の一人として首がもげそうになるほど、うなずいた。報じる側の理解も超える規格外のスーパーパフォーマンスだったからだ。
その大谷も第3戦で「右脚のけいれん」を起こし、試合後に点滴処置を受けていたという米報道が出たが――現場で取材している身としては、それほどまでに極限の状態になるのは全く不思議ではなかった。それほど過酷な1日、そしてポストシーズンだった。
由伸が園田通訳に「どういうこと?」
第7戦後はセレモニーなどで日付をまたいだ。ここで日本では経験できない出来事が起きた。

