「田中希実さんに使命を与えられたから」山本有真“世界陸上で志願のペースメーカー”の真実…レース後「また田中さんに救われた」言葉とは 

「試合前日の夜、私はプランも何もなく、漠然と自己ベストを更新することだけを考えていたんです。でも、田中さんに使命を与えられたことで、自分のすべきことが生まれました。それを絶対にやらないといけないと思ったので、6周半をしっかり走れたんだと思いますし、自分も思い切って、自己ベストを狙おうと走ることができました。本当に田中さんには感謝しています」

自分はまだまだ弱いな

レース後半、山本の体力は消耗していた　©Kiichi Matsumoto

　田中が先頭でレースを動かし、集団を振るい落とす走りをするなか、山本は「どこまで粘り切れるか」という自分との戦いに入った。だが、懸命に走るも、うしろから追いついてきた選手に余裕を持ってつかれ、ペースが上がると切り替えることができなかった。先頭で引っ張って走っていたので、体力をかなり消耗していたのだ。

「田中さんが先頭で走り、わーって場内が盛り上がっているなか、それをうしろで見つめている自分がいて……。応援してくれるみなさんに申し訳ないなと思いましたし、私はまだまだ弱いなと感じて自分に失望しました」

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　それでも懸命に体を動かし、苦しい表情でゴールすると、田中が待っていてくれた。

ゴールを田中が迎えてくれた　©Nanae Suzuki

決勝にいけたよ

「田中さん、どうでしたか？」

「（決勝に）いけたよ」

　田中は、最後まで先頭集団でレースを進め、5位（14分47秒14）で4大会連続の決勝進出を決めた。山本は、18位（15分36秒29）に終わり、自己ベストを更新することができなかった。それでも田中が決勝進出を決めてくれたことがうれしくて抱き合った。田中は、山本に「ありがとう」と何度も感謝の言葉を伝えた後、「有真ちゃんと二人で作ったレースだよ」と言ってくれた。

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