「田中希実さんに使命を与えられたから」山本有真“世界陸上で志願のペースメーカー”の真実…レース後「また田中さんに救われた」言葉とは 

「大会後、『田中さんみたいに陸上に人生を賭けて』とか『（村竹）ラシッド君みたいに泣くぐらいやらないと』とも言われたんですけど、私はそこまで人生を賭けられるのかなって思ったんです。3大会連続での世界大会出場は、自分のなかではすごいことだと思っていますが、それ以上を目指すのは周囲の期待があるからで、まだ自分が本当に出たいと思っているわけではないというか。

　それで代表になって14分台を目指すなら、ならない方がいいし、『もっと（代表に）なりたい人がいるよね』っていう話を横田さんにしたら『別にがんばらなくてもいいよ』と言われて（苦笑）。『世界陸上の決勝に進出するとか、それを縦向きの目標にすると苦しくなる。横向きに広げて、自分のやり方でいこう』と言われたんです」

自分らしいやり方で14分台に挑む

　横田には、視野を広げるという意味で、例えば海外のレースに出てはどうかと言われた。国内では山本はトップランナーとして見られるので、なかなか思い切ったことができない。だが海外のレースなら、山本も一出場者にすぎない。周囲を気にすることなく、前半を攻めてみたり、後半だけ1周64秒台で走るなど、いろいろな挑戦もできるだろう。

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　そうしているうちに、いろんな景色が見えてきて、もっとやろう、14分台を出したいという気持ちも自然と出てくるようになるのではないか。

　横田の言葉がしっくりきて、山本は覚悟を決めた。

「自分は、もっとやらなきゃダメなんだって苦しい考え方をしていたけど、横田さんに精神的に苦しまずにやれるように導いてもらったので、そのやり方で14分台を目指すなら、やってみようかなと思ったんです。世陸直後は、自分は弱いなって落ち込んでいたんですけど、今は『よし、もう1回、がんばろう』という気持ちになっています」

©Takuya Sugiyama

美を楽しみながら走る

　アスリートとして自分を磨くのと同時に、山本はファッションや“美”についても積極的に発信している。高校時代は、髪の毛は短く、肌は黒い方が速く見える、遊ばない方が陸上は結果が出る、と言われた。陸上は、そういう窮屈な競技ではなく、そう思われてほしくない。そのために山本は、美を楽しみながら走る姿をSNSに投稿している。

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