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「私、引っ張ります」「えっ、いいの?」世界陸上前夜に山本有真が田中希実にかけた言葉のワケ「自己犠牲で買って出たわけじゃないんです」

posted2025/11/13 06:03

 
「私、引っ張ります」「えっ、いいの?」世界陸上前夜に山本有真が田中希実にかけた言葉のワケ「自己犠牲で買って出たわけじゃないんです」<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

東京世界陸上、女子5000m予選の前夜、田中希実と同組で走るとわかった山本有真が田中にかけた言葉とは? 本人が真意を明かした

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佐藤俊

佐藤俊Shun Sato

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Kiichi Matsumoto

東京世界陸上、女子5000m予選。山本有真はなぜ先頭でレースを引っ張るという思わぬ走りを見せたのか。その伏線には、選考までの山本の苦悩と、レース前夜の田中希実との会話があった。山本本人の口から、その秘話が初めて明かされる。〈NumberWebインタビュー全3回の2回目/つづきを読む

 7月の日本選手権5000mに満を持して出場した山本有真だが、競技力とメンタルが同調していなかったのか、優勝争いはおろか、3位入賞もできず、まさかの7位に終わった。

1カ月くらい落ち込んでいた

「レース後、しばらく落ち込みました。あんなに練習したのに、なんでこんなんなんだろうって……」

 日本選手権を終えた後、山本は所属する積水化学の野口英盛監督に「休んでこい」と言われ、異例とも言える9日間のオフをもらった。

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「オフに入った時は、けっこうふさぎ込んでいたんですけど、友人とかと一緒にいたので、気持ち的には大丈夫だったんです。でも、チームに合流すると、なんかすごい喪失感があって走る気になれなかったんです。

 部屋のなかであのレースのことを思い出すと泣いてしまうので、目をつぶっているか、携帯をいじるぐらいしかできなくて。正直、1カ月ぐらい落ち込んで、何をしたらいいのか分からない状態でした」

 山本が落ち込んだのは、悪夢のような結果もさることながら、世界陸上東京大会への出場がほぼ絶望的と予想されたからでもある。東京大会の参加標準記録は、5000mが14分50秒00だった。日本選手権で優勝し、ダイヤモンドリーグで14分49秒95を出した田中希実が内定。2位の廣中璃梨佳、3位の水本佳菜は基準には達していないが、この日本選手権の順位とワールドランキングで、ほぼ確実に選ばれるだろうと言われた。

世界陸上はほぼない、ただ……

「今年は、ずっと世陸に出るつもりでやってきたんです。でも、日本選手権が終わって、世界陸上がほぼないって感じになって。ただ、私のなかでは、まだ100%ダメって決まったわけじゃない、ワールドランキングが変わる可能性があると思っていたんです。それで、気持ち的になんかモヤモヤして、走ることに向き合えなかったんです」

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