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来季Moto2昇格決定の古里太陽がMoto3初優勝達成…マレーシアで最速だった理由と、リスペクトする小椋藍との絆
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遠藤智Satoshi Endo
photograph bySatoshi Endo
posted2025/10/30 17:00
初優勝を果たし、パルクフェルメで「1番」のポーズをとったゴール直後の古里
太陽は鹿児島県鹿屋市出身。頑固で他人の言うことを聞かないと言われる“薩摩隼人”の血を引いているが、初優勝を達成してこう語った。
「勝って初めてわかったこともありました。いろいろ言われてきたのは、そういうことだったのかと。今年、表彰台に立てそうなレースをいくつも転倒して落としてきたのは、ただ勝ちたかったからなんですが……」
シーズンは残り2戦。ポルトガルとバレンシアは、どちらかと言えば苦手なサーキットである。
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「どちらも苦手なサーキットだけど、今年は苦手なサーキットでもいい走りが出来ている。どんな結果になるかわからないけど、しっかり走り切ってシーズンを終えたい」
太陽の「しっかり走り切って」という言葉からは、これまでとは明らかに違う響きを感じた。来季はホンダチームアジアからMoto2に参戦することがまもなく発表される。Moto2に上がる前にやり遂げたかったチャンピオンになることは果たせなかったが、初優勝というもうひとつの目標は達成した。
「グランプリで初優勝を達成して、うれしいだろうってみんなに言われた。うれしいですけど、これまで勝ってきたレースに比べてすごく特別という感じはないです。勝てたいまも、もっと速くなろうとだけを考えています」
追いかけるべき背中
そんな太陽に「優勝してもっとも嬉しかったことは?」と聞くと、こう答えてくれた。
「そうですね。イチバン嬉しかったのは、藍くんが優勝したら出迎えてやるって言ってくれてて、その約束に応えられたことです」
太陽がいまもっともリスペクトするのは、昨年のMoto2チャンピオンで今季MotoGPを戦う小椋藍。レースだけでなく藍のトレーニング方法などは常に太陽の手本となっている。20歳になった太陽が追いかけるのは藍の背中だ。来季のMoto2の先で、MotoGPでの活躍に期待したい。


