モーターサイクル・レース・ダイアリーズBACK NUMBER
来季Moto2昇格決定の古里太陽がMoto3初優勝達成…マレーシアで最速だった理由と、リスペクトする小椋藍との絆
posted2025/10/30 17:00
初優勝を果たし、パルクフェルメで「1番」のポーズをとったゴール直後の古里
text by

遠藤智Satoshi Endo
photograph by
Satoshi Endo
10月下旬、セパン・サーキットで開催された第20戦マレーシアGPのMoto3クラスで、ホンダチームアジアの古里太陽が、デビューから4年、77戦目、通算7回目の表彰台獲得にして、念願の初優勝を果たした。
太陽はパルクフェルメと表彰台で満面の笑みを浮かべて、初優勝の瞬間をこう振り返った。
「終盤は後ろとのギャップがあったし、それほど緊張はなかった。ただ、L5のサインボードを見たときはまだ接戦だったので、ちょっと緊張した。でも、落ち着いて走れたし、チェッカーを受けたときは嬉しかった」
ADVERTISEMENT
今大会、太陽は予選2番手だったが、決勝では好スタートを切ってホールショットを奪った。2周目には首位の座を譲ったが、3周目にトップに返り咲くと接戦の中で首位を快走。最後は2位以下に約2秒のリードを築く圧勝だった。
スタート前のサイティングラップでは2台のマシンが激しく接触する重大事故があり、レースは1時間以上の中断となった。そして、レースは15周から10周に短縮されて再スタートとなった。このとき太陽は、レース周回数が短くなったことから、フロントタイヤをハードからソフトに変更。リアはソフトのままとしたが、このタイヤチェンジで「ソフトにしたので序盤からペースをあげられる」とレースへの自信を深めていた。
コンディション変化でも生きた予選での速さ
しかし、オープニングラップはタイヤが全然グリップせず、かなり焦ったという。それが2周目に2番手にポジションを落とした理由だが、それでも太陽は落ち着いていた。
「スタートして1、2、3コーナーと、全然グリップしなかった。本当にこれ新品タイヤなのって思った。これじゃ勝てないと思ったけれど、とにかく転ばないように気をつけた。そうしたらみんなもペースが遅かったんです」
前日までは雲が多く、時折雨が降る不安定な天候が続いたが、決勝日のセパンは晴れ間が出た。熱帯の太陽がジリジリと照りつける。気温は34℃と前日までとそれほど変わらないが、路面温度は53度と10度近くあがった。太陽は「そのせいだと思うけど、まるでコンディションが変わって、自分のペースも1秒遅かった」と振り返る。

