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「夜中のデニーズ…泣きながら車を運転して」名将に重宝される男子バレーの頭脳・伊藤健士コーチ44歳“異色の履歴書”「父は札幌五輪で…」
text by

米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byOSAKA BLUTEON
posted2025/10/31 17:04
バレーボール男子日本代表・伊藤健士コーチ(44歳)。所属元の大阪ブルテオンでは今季から就任したトーマス・サムエルボ監督を支えている
様々な監督のもとでアナリスト、コーチを務めてきたが、特にフィリップ・ブラン、ロラン・ティリの両外国人監督から受けた刺激と影響は計り知れない。
「日本人(監督)だからダメというわけじゃないし、外国人じゃなきゃダメというわけでもない。ただ、僕が関わった外国人の監督さんたちは、めちゃくちゃ勉強していて、とにかく知識が豊富です。いろいろなことを1人でできてしまう。我々に仕事を分け与えてくれていますけど、おそらく1人でも全部できちゃう。それぐらいすべてに精通している。コーチング学では欧米が先を行っているんじゃないかと感じます。何を聞いても答えてくれるし、『わからない』なんて言われたことがないですから。
2人は哲学を持っていて、すごく熱量があって、なんというか“雰囲気”を持っている。それが年齢のせいなのか、外国の方だからなのか、まだちょっとわからないんですけど、人に何かを語る、その語り口や言葉の重み。人徳というんですかね。そういうところの深みをものすごく感じます。
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ティリさんはおそらくフランス語やイタリア語だったら、もっといい感じになると思う。ご自身も言われていますが、英語がめちゃくちゃ得意というわけではないので、表現しづらい部分もあって、それが少しもったいない。たぶんフランス語だったら、さらに響く、人を動かす表現の仕方を持っているんじゃないかと感じます」
将来は監督になりたい?
自身も監督をやりたいという思いは? と水を向けると、「いやいや」と苦笑した。
「監督ってもっと、僕自身は50代、60代でやるべきじゃないかなと。まだまだ早いかなという気はしています。そんなに急いでやる必要もないかなと思いますし。まだまだ人間としての深みを身につけないと。お陰様で代表でもクラブでも年がら年中、常に最先端のバレーに触れることができていますので、勉強していきたい」
今季は、新たに大阪ブルテオンの指揮をとるトーマス・サムエルボ監督のもと、SVリーグのシーズンを送る。東京五輪でロシア代表を銀メダルに導いた名将だ。
「サムさんはすごくロジカルでシステマチック。効率的な動きと予測力を大事にしている。構える姿勢や重心、手の位置などの要求がすごく細かいんですけど、確かに今のバレーの速さに対しては、そうしたムダを省いた動きが適正だよね、とすごく勉強になります」
新しい刺激に目を輝かせながら、今日も肩を回して山本との勝負に挑む。〈全3回〉


