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ドラフト明暗「おいおいどこ行くねん!」育成2位に興奮23歳、指名漏れ選手がスマホを…コーチは本音「野手の評価が厳しい」独立L球団の長い1日 

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広尾晃

広尾晃Kou Hiroo

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posted2025/10/29 11:04

ドラフト明暗「おいおいどこ行くねん!」育成2位に興奮23歳、指名漏れ選手がスマホを…コーチは本音「野手の評価が厳しい」独立L球団の長い1日<Number Web> photograph by Kou Hiroo

中日ドラフト3位で指名された篠﨑国忠。大量11人にドラフト調査書が届いた独立リーグ徳島の会場の雰囲気はどんなものだったか

 このあたりから会場全体に重苦しい空気が流れるようになり、「指名終了」のアナウンスも増えていく。放送開始から3時間近くになり、じりじりした空気が流れていく中で……。

《斎藤佳紳、投手、徳島インディゴソックス》

 西武が育成3位で指名した。

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 喜び、というより「安堵」の方が表現としてはぴったりくるかもしれない。斎藤の顔にようやく笑顔が浮かんだ。

投手で調査書を受け取ったはずが「外野手」指名

 今年の徳島は4人か、と思っていたが、西武の育成7位で、一昨日調査書を受け取ったばかりの安藤の名前が呼ばれた。

 しかし「外野手」である。

 安藤は今季、城西国際大から徳島に入り、6試合7回1勝0敗、防御率1.29、投手のはずだったが、西武は外野手で指名したのだ。西武は上間永遠(投手)、岸潤一郎(外野手)、古市尊(捕手)、伊藤翔(投手)、日隈モンテル(外野手)、宮澤太成(投手)、シンクレア・ジョセフ孝ノ助(投手)、谷口朝陽(内野手)と12球団で最も多くの選手を指名してきた。徳島の選手育成についても熟知している。安藤には「外野手としての可能性」を感じたということなのだろう。

 5人の選手が、ショッピングモールの階下にある会見場に移動する。多くのファンが待ち受けている。一方で指名を受けなかった6人はこの場には呼ばれない。毎年のことだが、痛々しい気持ちになる。その中の1人が、スマホで電話しているのを見かけた。

「野手の評価が厳しい」コーチが漏らした本音

 ドラフト会議を終えて行われた記者会見、篠﨑は「中日ドラゴンズに高い評価をしていただいてホッとしています」、斎藤は、駆け付けた家族を前に「指名の瞬間は頭が真っ白になって、何も考えられませんでした」と正直な感想を述べた。

 南啓介社長は「ファンの皆様の声援一つ一つが選手の力になっている。引き続き彼らを応援してあげてください」、岡本哲司監督は「ドラフトに指名される選手をつくっていく方針でやっている。もちろん試合に勝つことは大切だが、チームが強くてもドラフトにかかる選手が出てこないと意味がない。だから勝つための用兵はしない。いい野球をすることで、ドラフトにかかる選手を磨いていく」と徳島の立ち位置やコンセプトを明確に語った。

 端的に本音を漏らしたのは、橋本球史守備走塁コーチである。

「野手の評価が厳しい」

 徳島インディゴソックスはこれで13年連続でNPBからドラフト指名があった。また今年も「若者たちの運命が決まる瞬間」に立ち会った。彼らが少しでも長くプロで活躍してくれれば、との思いを強くした。〈ドラフト特集:つづく〉

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