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ドラフト明暗「おいおいどこ行くねん!」育成2位に興奮23歳、指名漏れ選手がスマホを…コーチは本音「野手の評価が厳しい」独立L球団の長い1日
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広尾晃Kou Hiroo
photograph byKou Hiroo
posted2025/10/29 11:04
中日ドラフト3位で指名された篠﨑国忠。大量11人にドラフト調査書が届いた独立リーグ徳島の会場の雰囲気はどんなものだったか
その右横には右腕投手、斎藤佳紳(けいしん)、天理大を中退して徳島に。今季は、33試合10勝2敗1セーブ、71.2回を投げて72奪三振、防御率1.88で最多勝と最優秀防御率のタイトルを獲得。まだ22歳だが既婚者だ。実はTBSが彼を追いかけてドキュメント映像を作っていた。今季の徳島の有力候補はこの2人で、選手を代表して斎藤が報道陣に挨拶をした。
例年同様、ここからはテレビの放送を見ながら、じりじりと発表を待つことになる。ドラフト1位指名が決定すると、ドラフト会議はいったん休憩になる。報道陣は、このタイミングで指名があるかと期待したが、徳島の選手は呼ばれなかった。
休憩の後、2巡目が終わり3巡目にアナウンスがあった。
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《中日、篠﨑国忠、徳島インディゴソックス》
会場から大歓声が沸き、篠﨑は後ろに座る岡本哲司監督、南啓介社長と抱き合って喜ぶ。毎年見ている風景だが、心が浮き立つ。ただ、毎年上位での指名選手を出している球団としては「これくらいは当たり前」というところか。
指名がかかり「おいおいどこ行くねん!」
続いて4、5巡目と指名が進む。筆者も含めて「第〇回選択指名選手」とテレビでアナウンスをされるたびに、選手の顔にカメラの照準を合わせる。もっぱらレンズは、斎藤佳紳に集中していたようだが。
5巡目指名が終わり、DeNA、ソフトバンク、阪神、日本ハムが「選択終了」のアナウンス。さらに6、7巡目と指名が進んだが、徳島の選手の名前が呼ばれない。会議室に重苦しい空気が流れる。球団スタッフからは「からいな」という声も聞こえる中、支配下ドラフトが終わり休憩に入る。
支配下ドラフトが終わると、日本ハムの新庄剛志監督ら席を立つ監督も出てくる。育成ドラフトも支配下ドラフトと同様、ウェーバー、逆ウェーバーで指名選手を発表していく。
報道陣も、アナウンスの度に斎藤に照準を合わせていたのだが――次に名前が呼ばれたのは内野手の岸本大希、広島から育成2位で指名された。桐蔭横浜大を出て2年目の23歳、今季は打率.302、5本塁打47打点、41盗塁。俊足巧打の内野手だ。
喜びのあまりか、岸本は周囲の祝福を受けた後、会見場の外に出てしまった。
「おいおいどこ行くねん!」
こうスタッフが呼び戻して、ようやく平静を取り戻したようだが、彼らがどれだけこのドラフトに命を懸けていたかが見て取れて、いじらしい気持ちになる。
3時間経っても斎藤の名前が呼ばれず…
やはり独立リーガーは「育成指名」になってからが本番だ。本当は支配下で指名されてもおかしくない選手でも「育成でも断らない」独立の選手は、指名順位が下がる傾向にある。
直後に右腕投手の髙橋快秀(かいしゅう)が千葉ロッテから育成2位で呼ばれた。多度津高校から入団して2年目、今年12月に20歳になる若手だ。今季は20試合 69.1回、7勝2敗、防御率2.86。制球力のよさが売り、彼も昨年、調査書を貰っていた。
しかし斎藤の名前は呼ばれない。


