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ドラフトウラ話《西武育成6位指名》最速153キロ、デッドリフトは240kg…でも所属は3部リーグ “偏差値70超”「名門大の帰国子女」はなぜプロの道へ?
posted2025/10/29 11:01
西武から育成6位指名を受けた正木悠馬。高校時代をアメリカで過ごし、本格的に投手をはじめたのは大学からという変わり種だ
text by

別府響Hibiki Beppu
photograph by
Asami Enomoto
22歳を迎えた正木悠馬の未来が明確に変わったのは、今年3月下旬のことだった。
東都大学リーグの春季リーグ開幕に向けて行われたオープン戦。そこで正木が投じた一球が、大学のスピードガンで150キロを記録したのだ。
「150キロ台が出たら、プロのスカウトだって見てくれるんじゃない?」
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そんな話を以前、知人から耳にしたことがあった。だが、その時は冗談半分のような話だと思っていた。大学3年時に148キロまで最速記録を伸ばしていた正木に、発破をかけてくれたのだ……と考えていた。
ただ、そんな記憶もあって、大学最後のシーズンにむけてはとりあえずその数字を目標にトレーニングを続けようと考えていた。大学3年生の冬という就職活動もはじめなければいけない時期ではあったが、うっすらと「卒業後も何らかの形で野球は続けたいな」という思いも持っていた。
プロ云々を現実的に考えていたわけではない。とりあえずは大台に乗せられたら嬉しい。そんなつもりで一冬を越えると、本当に150キロが出てしまったのである。
大学4年目で150キロ…覚醒の理由は?
大学時代に着々と続けていたフィジカルトレーニングに加えて、転機となったのは偶然、インスタグラムで目にしたある動画だった。
「たまたま流れてきたある海外の方のピッチング動画を見て、そのイメージが自分の中ではまったんです。全然、プロの選手とかじゃなくて一般の方の動画なんですけど、下半身の体重移動の感覚が変わった。そしたら急に、本当に150キロが出るようになって」
すると、正木の周囲がにわかに騒がしくなりはじめる。
それまでは縁のなかったプロのスカウトが試合を見に来るようになったのだ。中には大学のグラウンドまで訪ねてくるチームもあった。奇しくも知人の「150キロが出たら……」という言葉は、正鵠を射ていたことになる。
ただ、そんな喧騒を目の当たりにして、最初は本人としては戸惑いも大きかった。
「150キロといっても基本的にはただの数字でしかない。じゃあそれが出たからプロで通用するかというと、そんなに簡単じゃないのはもちろん分かっていました。でも、メディアに取り上げられたり、スカウトの方が見に来てくれるようになったことで、結果的に『プロという道もあるのか』と意識はするようになりました」


