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プロ野球PRESSBACK NUMBER
「負けたら終わりの大一番」の潔さでいいのか? CS完敗で“崖っぷち”のソフトバンクは強さの根源「王イズム」のメンバー固定にこだわるべきか
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byHideki Sugiyama
posted2025/10/20 11:04
今季パ・リーグ唯一の3割を打って初の首位打者となったソフトバンク・牧原だが、今シリーズでは15打席で無安打
試合後、監督の小久保裕紀は、報道陣の囲み取材が行われるベンチ裏の部屋に入ってくると、こう一気にまくし立てて、次の質問を受け付ける間もなく、出ていった。
「試合展開よりも、明日、パ・リーグ最後の試合。今年戦った一騎討ちのチームとやり切って、勝ったら日本シリーズ、負けたら今シーズン終了。分かりやすいです。やるだけです」
小久保監督は大一番にかける、という潔さを見せるが…
最後の大一番。のるかそるか、やるかやられるか。
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その“潔さ”に、少々、危惧を覚えた…といえば、老婆心が過ぎるだろうか。
野球界における、ある意味での“不変の真理”というものかもしれない。
ポストシーズンでも、シーズンと変わらぬ戦いをすべき——。
それは、レギュラーシーズンを勝ち抜いてきた主力選手へのリスペクトでもあり、シーズンと違う選手起用で、仮に負けたりすれば、そうした普段と違う“動き”が、イコール「監督が余計なことをしたから」という悪評にも直結することになる。
ダイエー、ソフトバンク監督時代の王貞治は、クライマックスシリーズの前身であるプレーオフも含めて、短期決戦で幾度となく涙を呑んできた。
2004年からプレーオフ制度がスタート、2007年からクライマックスシリーズとして、2025年現在まで続いている。この制度下で、王は2004年から4年連続でポストシーズンに挑んでいるが、実は一度も日本シリーズ進出を果たしていない。
ソフトバンクに伝わる“王イズム”
王によく、監督としての変わらぬ方針を聞かせてもらった。
「監督なんて、試合前に先発メンバーを書いたら、その後は、試合が終わるまで何もしないで、終わったら勝ってた、っていうのが一番いいんだよ」
ジョークっぽい響きもあるが、要は『メンバー固定』が王イズムでもある。
競争に勝ち抜き、何試合も、何年も結果を重ね続けてこそ、レギュラーの座をつかむことができる。4軍制のソフトバンクは、総勢120人の大所帯。そこから、1軍ベンチに入るだけでも、至難の業だ。だからこそ、その“格付け”を尊重するのだ。
しかし、CSファイナルは最長6試合の短期決戦だ。勢いに乗った選手が、好調を維持したまま「シリーズ男」となる一方、最初につまずき、復調のきっかけすらつかめないまま戦いが終わって、「逆シリーズ男」という不名誉な称号を与えられる選手も生まれてしまう。
シーズンでの実績にこだわりすぎると、短期決戦の流れを見誤る恐れがあるのだ——。
〈大一番へ、取るべき道とは?/つづく〉

