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ソフトバンクに現れた“27歳の怪物”「じつはボディビルダー目指していた」現地記者も驚いた…160キロ守護神が激変するまで「ここまで人間変わるとは…」
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田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/29 11:09
ソフトバンクの最強守護神・杉山一樹。なぜ覚醒したのか?
じつはボディビルダーを目指していた
杉山に社会人野球時代の逸話をひもといてもらうと、
「2年目に一度、野球が楽しくなくて辞めようと思ったんです。その時に目指したのがボディビルダー。大会に出ようと思って必死にウエイトを頑張りました。そしたら3年目に他のチームの補強選手で都市対抗に出ることになって。それで野球をまた頑張ろうと思って久しぶりに投げてみたら、ウエイトをしたおかげでボールが速くなってて。それでプロのスカウトが見に来てくれるようになったんです」
と、嘘みたいな実話を平然と喋る。
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ソフトバンクには2018年ドラフト2位で入団。その新入団発表当日の取材では「セ・パの違いが分からない」と暴露し、自身のプロフィールに「自分大好き」と書き記していた。理由を聞くと「きつい練習をしているとき『みんなより追い込んでいるな』とか、試合で何連投もしているとき『やべえ、俺』みたいな。頑張って乗り越えようとしている自分が好きなんです」と笑って説明し、番記者たちは“ドMの杉山”と囁いた。
また、以前はグラブに独特な刺繍することでも有名で、食べることの重要性を込め「牛一頭」、ビッグになることをイメージした「世界遺産になりたい」、ボディビルダーの言葉を拝借した「男は鶏胸肉」といった珍言で楽しませてくれた。
覚醒の理由「1日スケジュールにヒント」
現在は杉山らしいほんわかした空気感は残しつつも、まるで別人のようにも感じる。
今年はシーズン6月からの守護神定着にもかかわらず、胴上げ投手となった試合で今季30セーブ目を挙げた。この時点でパ・リーグ単独トップに立ち、タイトル獲得も現実味を帯びている。
成功の秘訣を訊ねると、杉山はこう答えた。
「丁寧に過ごしているからだと思います」
漠然とした表現だが、天然キャラとは程遠い思考だ。それは一体どういうことなのか。
「単純なことです。特に言えば、私生活です。朝起きて、犬に水をやって散歩して、帰って僕も朝食をとる。そして家を出る前に家事はすべてやり終える。球場から帰ったときに、やることをゼロにしておくんです。洗い物が残っているとかごみ捨てが残っているとかしないように。とにかく細かいことを面倒くさがらない。遠征から帰った翌朝とかでも、疲れている、ゆっくりしたいという言い訳はしないように」
筆者も杉山という人間をプロ1年目からずっと見ている。

