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ソフトバンクに現れた“27歳の怪物”「じつはボディビルダー目指していた」現地記者も驚いた…160キロ守護神が激変するまで「ここまで人間変わるとは…」 

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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photograph byJIJI PRESS

posted2025/09/29 11:09

ソフトバンクに現れた“27歳の怪物”「じつはボディビルダー目指していた」現地記者も驚いた…160キロ守護神が激変するまで「ここまで人間変わるとは…」<Number Web> photograph by JIJI PRESS

ソフトバンクの最強守護神・杉山一樹。なぜ覚醒したのか?

 家にお邪魔したことはないが、普段から接していればある程度想像はつく。だから、本当に意外な言葉だった。

「ですよね(笑)。もともとズボラで、適当人間でしたから。周りへの挨拶とかもそうだと思います。僕、基本的には面倒くさがりだから、以前はちゃんとしてないこともありました。だけど、そこも人間が出る。風の噂で周りから良くない評判を聞いた時期もありました。やっと、去年くらいから『アイツ変わった』と言われるようになりました」

 そんな思考が野球にもつながっているという。

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「例えばウエイトトレーニング。なかには『今日は体がキツイ、モチベーションが上がらないからやめておこう』という人もいます。僕の場合はそこじゃない。モチベーションとか関係ないんです。自分の一番いいパフォーマンスを出すために欠かせないやるべきこと。どんな練習もそう捉えます。細かいことを面倒くさがらずやった結果が今だと思うんです」

番記者「ここまで変わるとは…」

 これほどまでに自分自身を根本から変えた転機は、プロ5年目だった2023年シーズンにあった。右肘の故障などで初めて一軍登板ゼロに終わった。

「それまでもコントロールが課題って言われ続けて。フォームも試行錯誤して。あ、自分はもう終わるんだと思った。だったら、最後くらい自分が納得できるものをやって終わろうと思って、自分を見つめ直したんです。正直、最初はめっちゃ苦労しました。だけど、やってみて分かったんです。普段の生活でやり残したことがなく家を出る。マウンドに向かう時も同じ。だから、マウンドで不安がないんです。あの怪我のシーズンはきつかったけど、あの時がなければ僕は気づけなかったんだと思います」

 以前の杉山を知っているから、こんな立派な言葉を耳にして、感動すらしてしまった。

 おそらく杉山は不器用だと思う。だから遠回りもした。だけど、一度掴んだものは簡単に放さないのが不器用な人間の武器だ。

 リーグ優勝の胴上げ投手となり、次は日本一のチームの守護神へ。秋の戦いはまだ続く。

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