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「ヒデ(中田英寿)はそれが彼の生き方」「サンフレッチェは整っていました」“金満だけでない”マンC式に触れた日本人にJはどう見えるか
text by

田村修一Shuichi Tamura
photograph byTakuya Sugiyama
posted2025/09/28 11:26
ベルマーレ時代の中田英寿。元同僚で海外指導歴の長い宮澤浩氏が見た日本サッカーの印象とは
具体的には家族の問題だったり、宗教的にもセネガル人やモロッコ人など、ムスリムの選手がチームに何人もいて、彼らはまったく違うメンタリティで生きている。なので、僕たちとは全然違うストレスを抱えている。そこをクラブとしてどう解決していくか。スタッフは彼らの悩みにどう向き合っていくか。フィジカルだけでなくメンタルのコンディショニングも重要で、シーズンのなかでどう保っていくかに、時間とエネルギーを使うのがシティのやり方でした。
僕で解決できるものであれば当然するし、できないときにはクラブが吸い上げる。クラブが解決できなければ、マンチェスターにいる専門家(メンタルのエキスパート)に委ねます。今はオンラインで相談できるので、連敗してチーム全体の雰囲気がちょっと悪くなったときには、専門家のオンラインクリニックを全員で受けたり、個別にも受けられるシステムが出来あがっていた。そこは組織力なのかなと感じました」
CEOまで動かす“環境づくり”の哲学
――クラブとしては、より具体的にどう対処していましたか。
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「コーチだけではなくてスポーツディレクターも絡めた、それこそCEOレベルの人たちも関与していました。彼らは選手の契約を握っているので、言葉には影響力があります。コーチもまた契約してもらっている側なので、選手は不平不満をコーチには言いやすかったりします。そこでできる会話と、僕たちよりも上の立場の人たち――CEOとかディレクターとの会話はまた違うパワーがあるので、それをうまく活用するようにしていました。
あるときアルゼンチンの選手から『家族でホテルに住むのはきつい。一軒家に移りたい』」という要望を僕らスタッフが受けた。でも僕たちでは解決はできないので、CEOに話を持っていった。そこでどういう会話がされたのかはわかりませんが、選手はハッピーになって、ホテルから出ることなく住み続けたんです。
彼がいかにハッピーに練習や試合をこなしていくかは、クラブにとって重要だった。点取り屋で、勝ち点に直結しているポジションですから。お金なのか、祖国に残る家族を短期間呼ぶための費用をクラブが負担することなのか、具体的にはわかりませんが、そういうレベルの対処であったと思います。
ペップ・グァルディオラが言う8-2のフィロソフィーにはいろいろな8-2がありますが、コンディショニングや戦術、セットアップ、相手の分析などでは、ペップは8が環境を整えること、2が週末の試合に勝つための戦術等々だと述べています。環境が8なんです。
――環境が良ければ良いほど――シティではプラットフォームと言いますが。
「プラットフォームがしっかりしていればいるほど、その上で働くコーチや選手のパフォーマンスも絶対的に上がるという意味の8なんです」
ペップが説く「8-2」の真意
――それはシティを離れた今でもそう思いますか。

