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「先輩、何言ってんですか!」“学生コーチ”時代の沖縄尚学高監督・比嘉公也を木村昇吾が語る「僕は裸の王様。公也の言葉が気づかせてくれた」 

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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photograph byHideki Sugiyama

posted2025/09/26 17:02

「先輩、何言ってんですか!」“学生コーチ”時代の沖縄尚学高監督・比嘉公也を木村昇吾が語る「僕は裸の王様。公也の言葉が気づかせてくれた」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

甲子園を制してその指導法が話題になった沖縄尚学高の比嘉公也監督。大学時代に先輩だった木村昇吾氏が学生コーチの比嘉に直言されたこととは……?

「何言ってんですか!」

「何とかやれたという意味でそう口にしたら、『何言ってんですか!』とちょっとキレた感じで返されて。そこで、しまったと思いましたね。4年生の学生コーチが3人もいないんだから、それなりに回ってはいても実際は回っていないんで。違う誰かがカバーしていて大変なのに、自分が無神経にそう言ってしまったんです」

 学生コーチの存在を、軽んじていると思われたのかもしれない。そのときはそこまで重く受け止めていなかったが、のちに「だから公也はあそこまで怒ったのか」と理解する。

「ちょっと後になって僕が気づかされるんです。自分はどうしても正論で言ってしまうところがあって、キャプテンやし、四番やしっていう目線でみんなにも言うから、反論させない。卒業してからある後輩にもはっきり『木村さんのこと嫌いでした』と言われていますんで。まあ、裸の王様みたいなもんですよ。同級生たちが『昇吾に言わせているようじゃダメ。俺らでカバーしよう』と支えてくれている事実を知ったんです。

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 自分はキャプテンの仕事をやっていると勝手に思っていただけで、本当はみんなのおかげでキャプテンができていた。公也や主務の半ちゃん(半田真一)たちはチームを引いて見ている視点があるから、チームがどういう状況か分かる。自分が気づかされる一つの線のなかに、あの公也の言葉がありました」

 先輩、周りのことがきちんと見えていますか?

自分が恥ずかしかった

 言葉の裏側にあった真の意味を知り、木村は猛省する。「自分が恥ずかしい」と思えたから、頭をわざわざ丸刈りにした。みんなの支えがあるから、野球に邁進できているという現実。もっと言えば、比嘉の言葉だったから気づくことができた。後輩とか、野球のうまいへたとかは関係ない。一人の人間として比嘉のことを認めていたから、心に突き刺さったのだ。

 木村は言う。

【次ページ】 もしあの気づきがなかったら……

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