「先輩、何言ってんですか！」“学生コーチ”時代の沖縄尚学高監督・比嘉公也を木村昇吾が語る「僕は裸の王様。公也の言葉が気づかせてくれた」 

「公也はひじが悪くて投げないけど、ユニフォームをもらってメンバーに入っている試合もあるわけです。相当つらかったし、苦しかったとも思う。指導者になるって早々と決めて、一生懸命にやっていることも知っています。生活態度も本当にちゃんとしているから、説得力があるんですよね。アイツに言われたら、僕も背筋がピンと伸びる。みんなが僕をサポートしてくれているのに、それをまったく分かってないわけなんで、そりゃ公也が怒るのも無理ないですよ」

　感謝の気持ちはチームメイトにも、支えてくれる人たちにも、そして家族にも。

　心を入れ替えた丸刈り姿の木村は秋季リーグ開幕の選手宣誓で、ありふれた言葉ではなく、自分の言葉で誠心誠意、周囲への感謝を口にして皆を驚かせた。

もしあの気づきがなかったら……

木村はプロの世界に飛び込んだ　©JIJI PRESS

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　最後のリーグ戦、愛知学院大は下馬評どおり優勝を遂げ、木村はMVPを獲得する。そして横浜ベイスターズからドラフト11巡目で念願の指名を受け、目標にしていたプロの世界に飛び込んでいった。もし気づけていなかったら、その後のプロでの15年間もなかったに違いない。

　プロに入ってからも木村と比嘉の関係は続いた。

　比嘉は母校の沖縄尚学高に戻って2006年から野球部の監督に就任。木村が広島カープにトレードとなった2008年、センバツで全国優勝を遂げる。26歳での優勝監督は史上最年少記録となった。

「カープのとき（春季）キャンプが沖縄なので、決まって食事をしていました。どうやって選手を伸ばしているのかなって僕は公也の話を聞きたいのに、アイツは『生徒のためにも先輩の野球の話聞かせてください』って、自分のことはあんまり話したがらない。生徒のため、生徒のためって。いつもそんな感じなんです。

　NPBで最後のシーズンになる西武での2年目（2017年）、沖縄での試合後に二軍行きを通達されたんですよ。確かその晩も、公也と一緒に食事をしていて。会いたかったんでしょうね。目の前に公也がいると、自分を客観視しなきゃって思えるし、何よりもピリッとできる自分がいるんです」

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