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「先輩、何言ってんですか!」“学生コーチ”時代の沖縄尚学高監督・比嘉公也を木村昇吾が語る「僕は裸の王様。公也の言葉が気づかせてくれた」

posted2025/09/26 17:02

 
「先輩、何言ってんですか!」“学生コーチ”時代の沖縄尚学高監督・比嘉公也を木村昇吾が語る「僕は裸の王様。公也の言葉が気づかせてくれた」<Number Web> photograph by Hideki Sugiyama

甲子園を制してその指導法が話題になった沖縄尚学高の比嘉公也監督。大学時代に先輩だった木村昇吾氏が学生コーチの比嘉に直言されたこととは……?

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二宮寿朗

二宮寿朗Toshio Ninomiya

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Hideki Sugiyama

夏の甲子園で優勝を飾った沖縄尚学高で、ひときわ話題になったのが比嘉公也監督の指導法だった。大学時代、比嘉の1年先輩だった元プロ野球選手、現在はクリケットで活躍する木村昇吾が、当時の比嘉青年の鮮烈な思い出を語ってくれた。〈全2回の2回目/はじめから読む

 2002年の愛知大学野球、秋季リーグの開幕が近づいていた。

 1年時の1999年から強豪の愛知学院大でショートのレギュラーを張り、キャプテンを務める木村昇吾にとって4年生最後のリーグ戦となる。入学して以来春も秋もずっと優勝してきており、ドラフトで指名を受けるためにも気合いは入り過ぎていたくらいだった。そんな折、チームに“さざ波”が起こる。

 社会人の三菱自動車岡崎との練習試合に完敗したことで、準備不足を理由に監督判断で3人の学生コーチが練習から外されたという。木村と同じ4年生の学生コーチが不在のなかで練習が行なわれ、投手を担当する比嘉公也をはじめ3年生の学生コーチが中心となってこの緊急事態をしのいだ。

「先輩、ちょっといいですか」

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 学生コーチとは、監督の方針に沿いつつ、練習メニューを確実にこなしていくサポートをする役割を担う。3人もいなくなれば、残った学生コーチにしわ寄せが来てしまうのは当然だ。

 それでも何とか無事にその日の練習を終えて、寮でちょっと遅い夕食を取っていたときだった。

「先輩、ちょっといいですか?」

 木村に声を掛けてきたのは比嘉だった。

「きょうの練習、どうでした?」

 真剣な目を向けてくる後輩に、木村は何気なく「(練習は)それなりに回ったよな」と応じた。するとみるみるうちに比嘉の表情が強張っていった。

 木村が23年前の出来事を昨日のことのように振り返る。

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