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「これからはお前がやるんだぞ」“セッター”が背負う特別な重圧…男子バレー低迷期を知る、深津英臣が“35歳”になった今も日本代表を目指す理由
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田中夕子Yuko Tanaka
photograph byYuko Tanaka
posted2025/09/22 11:04
4年ぶりに日本代表に復帰し、今季は若手に混ざってBチームでプレーした深津英臣(35歳)。コーチには長く一緒に戦った清水邦広、永野健が務めた
先人たちの想いを託されたのに、なぜ自分は東京五輪のコートに立っていないのか。テレビの向こう側にいる日本代表は、かつて敵わなかった列強の国々を相手に躍動している。仲間たちの姿を見るうちに、原点に立ち返ることができた。
「それまではいつも関田や藤井と自分を比べていたんです。だから『俺は勝つことで認めさせるしかない』と必死だった。でもそうじゃなくて、単純にこいつらと勝負ができることが楽しいんだよな、と素直に思えたんです。あんな大舞台で普通に戦うなんて俺にはできなかった。バレーボールを楽しむなんて考えたこともなかったけど、人と比べるんじゃなく自分がうまくなることを純粋に楽しみたい。30歳を過ぎて、初めてそう思えるようになりました」
「もう一度、関田と競い合いたいよなぁ」
東京もパリも、チャンスは訪れなかった。ただ、深津のバレーボール愛は薄れるどころか濃くなるばかり。「現役選手であり続ける限り日本代表を目指したい」と熱く語りながら、「そのために(SVリーグで)優勝しなきゃと思うのではなく、やりたいことをやった先に結果がついてくればいい」と笑みを浮かべる顔には“楽しむ”余裕が感じられる。
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そして、夢を現実に変えるチャンスが巡ってきた。パナソニック時代に師事したロラン・ティリ監督のもと、新体制の日本代表登録メンバー44人に深津も名を連ねた。
「藤井と関田は僕にとって戦友。本気で戦ったかけがえないの存在で仲間。大宅(真樹)とか永露(元稀)とかセッターはいっぱいいるけど、またもう一回、あの場所で関田と競い合いたいよなぁって思うんですよ」
今は、自分が進むべき道に迷いはない。だからこそ、気になることもある。
「柳田はこの先、どうするんですか?」
深津が気に掛けたのは、自身と同じようにかつて日本代表の主将という立場に就きながら五輪落選という苦い経験を味わった後輩のことだった。〈第4回に続く〉


