プロ野球PRESSBACK NUMBER
「山、貸してもらえないかな」王貞治の広がる夢…ジュニアからプロまで“野球の聖地”作りへ「大谷翔平君の活躍で野球人気が戻った今がチャンス」
text by

喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/16 11:04
今年の世界少年野球大会の記者会見にて。王には次世代への野球の普及のための大きな夢があるという。そのカギとなる「山」とは……?
「例えば、うちの地域を活用してくれないかな、と思っているところはあるはずですからね。だから、こっちからドアを叩かないと、向こうからは言ってきてくれないんだから。こちらとして、アイディアを提供して、こういう風なことを考えているんですが、いかがですか、とね。向こうから言ってくれるのを待ってたんじゃ、絶対ダメなんです」
王は、本気だ。
繰り返しになるが、王が中心となって立ち上げた『球心会』の最大の目的は、未来の野球界を担う子供たちが野球を思い切りやれる環境を整備することで、野球人口を拡大していくという、野球界の基礎固めと、その底上げにある。
ADVERTISEMENT
それがひいては、野球界全体の安定にも繫がるという図式だ。
プロ野球16球団拡大論は「別個のこと」
だから王は、今回のインタビューで「別個に考えてほしい」と強調したことがある。王の持論である「プロ野球・16球団拡大構想」のことだった。
「チーム数を増やしたいというのは、個人の持論。もともとの持論なんです。だから『球心会』としてそういうことをするとか、考えるというのは別個にしてください。球心会の目的は、子供たちに野球をやる場、チャンスを提供する。それで野球界の“横のつながり”を広げていくことですから」
王は、2020年1月に、福岡のテレビ局のインタビューで「野球界のためには、プロ野球の球団が16、あと4つ誕生してほしい。チーム数は多い方がいい。子供たちに夢を与えるためには、環境整備が大事」と発言。メディアに大きく取り上げられたこの持論と、今回の『球心会』の立ち上げが、いつの間にかリンクして「16球団構想のために、球心会を立ちあげた」と“誤解釈”されていることを危惧していたのだ。
12球団から16球団へのエクスパンション、2リーグ制から全国3~4地区制に分けてのペナントレースといったフォーマットの話は実に興味深く、王はかねてから、その「16球団構想」をメディアの取材に対しても披露してきた。ただ、今回立ち上げた「球心会」の目的には、その16球団構想は“ない”。王の優先順位は、ジュニアレベル、いわゆる“草の根レベル”での野球振興を通しての、野球界の基礎固めが第一。この視点を欠くと、いくらプロ野球界を拡大しようにも、頭でっかちの、不安定な野球界になってしまう。

