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「山、貸してもらえないかな」王貞治の広がる夢…ジュニアからプロまで“野球の聖地”作りへ「大谷翔平君の活躍で野球人気が戻った今がチャンス」
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喜瀬雅則Masanori Kise
photograph byJIJI PRESS
posted2025/09/16 11:04
今年の世界少年野球大会の記者会見にて。王には次世代への野球の普及のための大きな夢があるという。そのカギとなる「山」とは……?
カル・リプケンの一大野球施設
メジャー歴代トップとなる『2632試合連続出場』の世界記録を持ち、2001年に現役引退した、元ボルティモア・オリオールズの鉄人、カル・リプケン・ジュニアは、ボルティモアの中心地から車で40分ほどの郊外にあるメリーランド州アバディーンに、私財を投入して「リプケン・エクスペリエンス」という一大施設を2002年にオープンさせた。
敷地内には、野球のグラウンドが9面。ホテルもあり、ここで毎年「カル・リプケンU12ワールドシリーズチャンピオンシップ」が開催され、日本からもチームが参加。2007年から18年までは、リプケン氏の理念に賛同した元中日、阪神、楽天監督の星野仙一氏の全面支援のもと「Hoshino Japan」のチーム名で参加していた。星野氏の逝去後も、コロナ禍の2020年からの3年間を除き、毎年チームを派遣している。
このアバディーンには、ボルティモア・オリオールズの1A、アバディーン・アイアンバーズが本拠地を置いている。つまり、プロ、アマが共存できる一大施設の構想は、王が「球心会」を設立した意義と、まさしく一致するのだ。
山の中の野球の“新たな聖地”
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「ちょっと街の中心地から離れたとしても、そこへ子供たちが来て野球をやるようになれば、野球熱というのは広がっていきますよ。日本は小さい国だからこそ、それをやらなきゃいけない。ちょっと交通の便とか、そういう面を考えれば、都心に近いところではなかなかできないけど、工夫すれば、何か方法があると思うんだよ」
どこかの静かな山の中に、野球の“新たな聖地”が整備される。
そこで、ジュニアレベルの大会をメインに、高校野球や大学野球、プロでもファームレベル、独立リーグなどの試合を開催してもいいだろう。普段は、それこそ草野球を楽しめるように一般開放して、地域の人々にも活用してもらう。野球を通した国際交流、交換留学のようなプランもあり得るだろう。
年齢やレベル、カテゴリーを問わず、誰もが野球に打ち込めるような一大拠点ができれば、野球振興はもちろん、地域振興にもなり、人の往来が増えることでの経済効果だって期待できるだろう。それこそ王が呼びかければ、どこからか“山拠出”に応じてくれるような気がしてならない。

