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「東大・京大合格者が出る」福岡の公立進学校で甲子園4回…高校野球の暴力・カネに“染まらなかった”監督がいた「週16コマ授業」「練習後は塾へ」 

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樫本ゆき

樫本ゆきYuki Kashimoto

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posted2025/09/05 11:02

「東大・京大合格者が出る」福岡の公立進学校で甲子園4回…高校野球の暴力・カネに“染まらなかった”監督がいた「週16コマ授業」「練習後は塾へ」<Number Web> photograph by Yuki Kashimoto

東筑の前監督、青野浩彦。ピンチの時こそ観察眼を発揮し、とっておきの一言で選手の背中を押す(2019年撮影)

「(西日本短大付の)4番の佐藤仁君のバッティングがすごすぎてもうショック。低反発であんなにも飛ばせるものなのか!」。夫婦そろって観客席から観る初めての甲子園。最後まで野球少年の気持ちで楽しんだ。

 勇退のことは選手には黙っておいてくれと周囲に頼んでいた。感傷的な空気になるのを避けたかったからだ。教え子が計画している慰労会の参加も首を縦に振らないという。頑ななまでの教員としての振る舞いは、43年間一貫していた。

 教え子の石田泰隆さん(96年夏の甲子園エース)は語る。

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「弱い学校とばかり練習試合をするので、『もっと強いところとやらないとダメだ』と言われたこともあったそうですが、青野先生は『強くなるかもしれんやろ』と静かに返したそうです。名門も無名校も分け隔てなく向き合う姿勢を、僕らはずっと尊敬していました」

 名誉や利益よりも、信念を重んじる。そんな背中を、教え子たちは忘れていない。

スカウト合戦の現代野球で…

 今秋からは副部長として9年、青野監督を支えた山下聖士監督が指揮を執る。1998年センバツ出場の控え捕手。東京学芸大学卒の数学科教員だ。「45歳のオールドルーキーです」と謙遜する山下新監督だが大きな覚悟もある。「僕も青野先生の教え子なので、『打たないと面白くない』と僕も思う一方で、バットも変わって細かいところもできないと勝てない。青野先生の超攻撃型と、喰田孝一(故人/元東筑監督)先生が築いた緻密な細かい野球のいい所をバランスよく取り入れてやっていこうと思います」

 青野は来春の退職まで教え子の山下監督をサポートしながら、しばらくノックも打つ予定だ。

「低反発バットで打球が飛ばなくなったけど、戦い方を変えれば可能性はありますよ。抗ってほしいですね。応援しますよ」

 そう話す青野に、聞いてみたいことがあった。高校野球監督として43年。有望選手が集まればもっと甲子園に……。そう思ったことはないのか。つまり、有望選手のスカウト合戦、野球特待生についてどう思うかと。

 すると青野はきっぱりと答えたのだった。

〈つづく〉

#2に続く
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